わたし、花見堂小春、横濱仏語塾の三年生。親友の藤村宮子さん(竹久夢二の絵から出てきたような美女よ)や樹神透子さん(見かけはせいぜい十歳だけど、立派に同級生)と楽しく女学校生活を送っている。
 うちの学校は、ちょっと変わっていて、英語、フランス語(創設者で校長先生のマダム・デルジュモンがフランス人なの)なんかの普通の学課の他に、薬草学、水晶玉の透視、占いの授業もある……そう、お察しのとおり、実は魔女学校なの。
 わたしたちはみんな魔女の卵。一人前の魔女を目指して毎日勉学に励んでいるというわけ。なかでも大事なのがダンスの授業。魔女にダンス? と思うかも知れないけど、ダンスというのは仮の名称で、本当は飛行術、つまり箒に乗って空を飛ぶ練習よ。
 実はわたしはダンスがちょっと苦手、ちゃんと訳はあるんだけど、ここでは言わないでおく。
 まあ、とにかくとても楽しい学校生活を送ってるわけ。

 そんなある日、学校のご近所の椰子の木屋敷から、西洋絵画のコレクションを見学にこないかというお誘いが。我が校の美術の先生マダム・ポルティエが、お屋敷の大奥様とお嬢さんに油絵を教えていたことがあるんですって。
 お屋敷はとても立派で、離れの洋館に飾られていた絵画もどれも素敵、珍しい植物を集めたっていう温室も素晴らしかった。
 ただ、温室であった男の子はちょとつんけんしていて、どうかと思うけど。

 折しも横濱では化け豹騒ぎが勃発、なんとうちの下級生が遭遇してしまったの。幸い事なきを得たけれど……。

 時は大正の御代、舞台は横濱の女学校。
 魔女を目指す少女たちの活躍を描く3部作開幕!
シトロン坂を登ったら_登場人物

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