緻密な伏線と論理展開の妙、愛すべきキャラクターなどで読者を魅了した泡坂妻夫。その偉大なミステリ作家が生み出した、亜愛一郎、ヨギ ガンジーと並ぶ伝説の奇術探偵が、創元推理文庫にて復活します!

曾我佳城は、結婚を機に若くして引退した、美貌の奇術師。普段は物静かな彼女は、不可思議な事件に遭遇した途端、奇術の種明かしをするかのごとく、鮮やかに謎を解く名探偵となります。奇術師の顔を持った著者だからこそ描けた本シリーズは、佳城が1980年に「天井のとらんぷ」で初登場してから、2000年に発表された最終話「魔術城落成」の最後の事件で去るまで、20年にわたって活躍が描かれました。

全短編を収録した『奇術探偵曾我佳城全集』(講談社)は2000年に刊行され、『このミステリーがすごい!2001年版』国内部門第1位、2001年版「本格ミステリベスト10」第1位を獲得しました。

今回の創元推理文庫版の収録順は、単行本版と揃えた発表順です。上巻は、殺人事件の被害者が死の間際、天井にトランプを貼りつけた理由を解き明かす「天井のとらんぷ」、本物の銃を使用する奇術中、弾丸が掏り替えられた事件の謎を追う「消える銃弾」、奇術専門誌宛に送られた原稿に秘められた暗号に挑む「カップと玉」など、奇術トリックが炸裂する11編を収録。

下巻は、花火大会の夜の射殺事件で容疑者の鉄壁のアリバイを崩していく「花火と銃声」、雪に囲まれた温泉宿で起きた、“足跡のない殺人”の謎を解く「ミダス王の奇跡」、佳城の夢を形にした奇術博物館で悲劇が起こる、最終話「魔術城落成」など、幕切れが鮮烈な11編を収録。

どの短編も、どんでん返しあり暗号解読ありアリバイ崩しありと、切れ味鋭い様々なミステリが楽しめます。そして、そんな泡坂作品の魅力について真摯に語った、米澤穂信さんによる解説も見逃せません。

『泡坂妻夫引退公演』に続き、早川洋貴さんが贈る、奇術中の華麗な曾我佳城を描いたカバーが目印です。ミステリ界の奇術師が贈る、傑作シリーズをご覧あれ!

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〈上巻〉収録作:
「天井のとらんぷ」
「シンブルの味」
「空中朝顔 」
「白いハンカチーフ」
「バースデイロープ」
「ビルチューブ」
「消える銃弾 」
「カップと玉」
「石になった人形」
「七羽の銀鳩」
「剣の舞」

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〈下巻〉収録作:
「虚像実像」
「花火と銃声」
「ジグザグ」
「だるまさんがころした」
「ミダス王の奇跡」
「浮気な鍵」
「真珠夫人」
「とらんぷの歌」
「百魔術」
「おしゃべり鏡」