全世界で7000万部の驚異的なベストセラーとなった『ダ・ヴィンチ・コード』。同書を始めとするハーヴァード大学教授ロバート・ラングドンを主人公としたシリーズ、その四作目にあたる『インフェルノ』出版の際に報じられたニュースをご存知でしょうか。刊行前の原稿の流出を防ぐため、五ヶ国語の翻訳家たちが、出版社の地下室でなかば監禁状態のまま三ヶ月ちかく翻訳作業にあたったというのです。
 一冊のベストセラーの出版をめぐって、地下室に監禁された人々。現実にあったとは俄に信じがたい話ですが、特異な理由によって外界から隔絶される状況は、まさにミステリにおける花形である“クローズド・サークル”を連想させます。
 もし、そこに何者かの思惑が絡んでいたら、クローズド・サークルで何か事件が起きたとしたら――現実の出来事に想を得た作品は数多くありますが、これほど想像をかきたてられる魅力的なシチュエーションは、そうありません。それを理想的なかたちで映像化した作品が『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』です。

9人の翻訳家1

 世界最大規模を誇る書籍の見本市フランクフルト・ブックフェアから物語は始まります。多数の記者の前で大々的に発表される、世界的ベストセラー〈デダリュス〉三部作の完結編。出版社社長であるエリック・アングストロームは、原著の刊行と並行して多言語の翻訳を始めて、全世界で同時発売することを高らかに宣言する。
 プロジェクトのためフランスの人里離れた洋館に集められたのは、9人の翻訳家。国も言語も異なる男女は、洋館の地下にひろがる巨大なシェルターに隔離されることに。内部にはあらゆる辞書や百科事典、過去の文学作品を資料として収蔵した書架がならぶほか、豪奢な食事、プールやランニングマシンといった娯楽施設も完備されています。しかし、携帯電話やPCなど外界との通信機器は持込不可、銃器を装備した屈曲な警備員たちの監視のもと、毎日20ページだけ渡される原稿を一ヶ月で翻訳して、もう一ヶ月で推敲すること。理想的な環境とはおよそかけ離れた非人間的な翻訳作業が始まるなか、程なくして事件は起こった……。

9人の翻訳家2

 9人の翻訳家を演じるのは、役柄と同じ9ヶ国の俳優たち。『007/慰めの報酬』ではジェームズ・ボンド演じるダニエル・クレイグと共演したオルガ・キュリレンコを始め、各国で高い評価を受ける演技派俳優たちが集まり、緊迫感のある演技を競わせます。監督ならびに脚本は、初の長編監督映画『タイピスト!』がフランス映画祭観客賞受賞のほか、いくつもの賞にノミネートされて一躍脚光を浴びたレジス・ロワンサル。ダニエル・プレスリー、ロマン・コンパンといった同作と同じ布陣が、この『9人の翻訳家』でも共同脚本に名を連ねます。

9人の翻訳家3

 編集部も試写会に招待いただきました。何気ない場面のひとつひとつが視点や語りを変えることで異なる意味をもち、徐々に謎を深めていく中盤は、いつの間にか事件の渦中にいる翻訳家たちと同じスリルに惹き込まれてしまいました。
 観終わったあとは一編の優れた長編ミステリのような上質な心地が残るとともに、考え抜かれた映像演出と構成には観返す際の発見も多いです。何より、クローズド・サークルを極めて現代的なテーマを軸に更新させる意欲作となっています。登場人物である翻訳家たちの語る小説論も含め、本好きには堪らない憎らしい演出も多く、映画好きのみならず読書家の方々にもおすすめしたい一作です。

 映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』は、2020年1月24日(金)ロードショーです。

■公式サイト

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 映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』公開に先駆けて、1月15日(水)夜に都内で開催される先行試写会のチケットを、特別に5組10名様にプレゼントいたします。

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