2019年は文庫創刊60周年と、弊社の記念の年でした。
その掉尾を飾る文庫書き下ろし作品が、今作『文豪たちの怪しい宴』となります。
文学部教授の曽根原がシンポジウムの討論会の帰り道、駅までの途中にあるバーにふと立ち寄ることで、物語が動き出します。〈スリーバレー〉の女性バーテンダーの何気ないひと言、「あたし前から『こころ』に関して疑問に思っていた事があるんです」が、曽根原の教員魂(?)に火を付けます。二人のあいだで議論が深まっていくそんな折、常連客の宮田と名乗る男が登場し、バーテンダーと曽祢原の議論はさらに混迷を極めていきます。それはそうですよね、宮田は、『こころ』が百合小説だと主張するものですから……。
『こころ』のほかに、太宰治の『走れメロス』、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』、芥川龍之介の「藪の中」と、〈スリーバレー〉のカウンターごしに、文学談義は続いていきます。どれもほとんどの方が読んだことのある作品ばかり、そこにどんな新解釈があるのか? ぜひ、今作を読んで、〈スリーバレー〉での三人のように、忘年会・新年会の話のネタにしてはいかが。
ちょうどNHKの「ブラタモリ」でも12月7日に宮沢賢治の故郷「花巻」を放送していました。しばらく『銀河鉄道の夜』を読んでないなと思った皆さん、今作との併読もお薦めです。
ちょうどNHKの「ブラタモリ」でも12月7日に宮沢賢治の故郷「花巻」を放送していました。しばらく『銀河鉄道の夜』を読んでないなと思った皆さん、今作との併読もお薦めです。
さて今作は、『邪馬台国はどこですか?』にはじまる〈邪馬台国シリーズ〉同様のバー〈スリーバレー〉を舞台にしながらも、早乙女静香やマスターの松永は登場しません。新たなトリオ(宮田のみ両シリーズに共通するキャラクターですが)の結成をお楽しみくださいませ。そして、次回作にはどんな作品たちがチョイスされるのか?