今から50年くらい前の時代というか世界を想像してみる。そこでは現在ではあって当然のものがない。その代表的なものがパソコンであろう。気軽にメールが飛び交う世界など想像もできなかった。まして電車の中で、スマホでゲームに興じるなど考えられもしない。これらを単純に進歩というつもりはないが、何かが変化しているのは確かなことだろう。

 囲碁の世界では、江戸時代にそれまでと違う考え方が現れて、より深化してきた。手割論とか秀策流の布石が挙げられる。また昭和になってスピード重視の新布石が主張され、星に打つ技術が開発され、新しい時代を作ってきた。その度に囲碁は面白くなってきた。

 そしてトップ棋士より強いAIの登場で、また新しい世界に突入した。以前はいけないとされていた早期の三々侵入が流行定石になるなど、昔よく打たれていた手法があまり見かけられなくなり、AIが悪いと判断する変化はほとんど採用されなくなってきた。かつて囲碁を勉強した人は困惑して当然である。羽根直樹碁聖のようにAIの流儀をほとんど使わないプロもいるが。

 ともあれ現在は、AIの研究なくして囲碁は打てなくなってきている。しかしAIを真似して打つだけでは強くはなれない。

 本書は、三々や両ガカリの変化をはじめ、最近の流行定石に焦点を当てて解説したもので、出来る限り役に立つ変化を収録した。ただ周りの配石が一路違うだけで変化が異なることもある。そのため変化図をただ覚えるだけでなく、周辺の配石を考えながら打つことが棋力向上には有益なことである。