アドリーヌ・デュドネ  藤田真利子 訳


 狩猟が趣味のDV男の父親、夫の顔色をうかがうだけの母親。少女は弟と廃車置場で遊ぶ無邪気な日々を送っていたが、ある日、アイスクリーム売りのおじさんに起きた恐ろしい事故を目撃してから、弟は笑わなくなり、父の獲物の保存部屋・剥製部屋にこもるようになってしまう。
 そして小動物をいじめたりするようになり……。
 十歳の少女は、現実をリセットしたいと思う。あの事故さえ起きなければ、と。
 あの恐ろしい事故をなかったことにできるのか? 利発な少女は弟の笑顔をとりもどせるのか? この人生ではない、本来あるべきだった人生を手にできるのか? 

 本書は、刊行されるやいなや、本国ベルギー、フランスで話題を呼び、ELLE読者賞、Fnac小説大賞(フランスの大型書店チェーンFnacが選ぶ)そして高校生が選ぶルノードー賞、ヴィクトール・ロッセル賞(ベルギーの純文学の賞)、フィリグラーヌ賞(ベルギー・ブリュッセル最大の書店が選ぶ、その年の最も良質な作品に与える文学賞)、プルミエール・プリュム賞(書店が選ぶ、その年の最も素晴らしいデビュー小説に与える賞)等々、数多くの文学賞を受賞した超話題作です。
                           
 著者のアドリーヌ・デュドネ Adeline Dieudonne は1982年10月12日生まれのベルギー人作家。ちなみに、父親は、なんと1984年代から1991年の間、マツダのルマンワークスドライバーとして活躍し、1991年のルマン優勝に大きな役割を果たしたピエール・デュドネ氏だそうです(って、かくいう私はまったくそのジャンルにうといのですが。『NEVER STOP CHALLENGING 飽くなき挑戦』という雑誌の増刊号?にAmazonで高値がついているのを見つけました! すごい人らしい)。
 2017年に発表した短編 "Amarula"で、FWB大賞を受賞、同年に戯曲 "Bonobo Moussaka"を発表、話題をよびました。そして2018年の本作でフランス語圏の文学界の寵児となったのです。

 破綻している家庭でけなげに生きる少女の、成長と回復のこの物語は、設定こそかなりつらいところもありますが、決して重苦しいものではありません。少女の想像力、全体に満ちている詩情、そしてなんといっても、最後に待ち受ける驚きが、読者の想像力をかき立ててくれます。

 フランスの有名な書評家ベルナール・ピヴォ氏の言によれば「比類なき新しさとまれに見る内容の豊かさ!」、雑誌「ELLE」の書評では「腹に一撃食らうような作品」、「レクスプレス」誌では「この新人作家には敬意を払うしかない」、「ル・ポワン」誌は「最初から最後まで予測不能」と賞賛の言葉には事欠きません。
 
 山本由実さんの可憐な装画を、藤田知子さんがどこか不安を感じさせる素晴らしいカバーにまとめてくださいました。
  作中に象徴的に現われるハイエナ、そして子犬のドフカと弟、廃車……。

 著者が動き語る姿をご覧になりたい方はこちらをどうぞ。



 フランスの有名な、本についてのTV番組に登場したときのものです。
(編集部M・I)