これら直近の先輩方に続いて、令和初の鮎川哲也賞受賞作は方丈貴恵さんの『時空旅行者の砂時計』に決定。いよいよ刊行となります!

  • 呪われた一族
  • 館で連続殺人
  • 見立て殺人
  • タイムリミットは4日間
  • 読者への挑戦状
 こうした本格ミステリの魅力的なガジェットをこれでもかと盛り込みつつさらに、タイムトラベルというSFネタをアクセントとした本作。ざっとあらすじを以下に紹介します。

 呪われた竜泉家の血筋のせいなのか、重篤な病に罹った妻を見舞った帰り、加茂のスマホにマスター・ホラと名乗る不審な人物からの着信が入る。「竜泉家の呪いを解いてみませんか? 宜しければ、私が手を貸しましょう」と。その言葉につられて加茂が訪れたのは、1960年の竜泉家の別荘だった。いつのまにか、2018年から1960年にタイムトラベル! しかも街へと向かう橋は破壊され、陸の孤島状態であり、すでに2件の殺人が発生。
 さらに続く殺人、そして最終的には土砂崩れに巻き込まれ、すべてが失われてしまうーー。
 それらの事件の真相を暴くことが妻の命を救うことに繋がる、とマスター・ホラからのアドバイスを受け、加茂は決意を新たにするのだが……。果たして、すべての謎を解き、現代に戻ることができるのか? 

 そして著者の方丈貴恵さんは、1984年兵庫県生まれ、京都大学卒。学生時代は数々のミステリ作家、ミステリ編集者を生み出したことで知られる「京都大学推理小説研究会」に所属していました。今後の活躍が、ますます期待できますよね。


 ここからは、編集部および営業部からの『時空旅行者の砂時計』を読んでのコメントを参考までに、ご紹介しましょう。

最近流行の特殊ルール設定ミステリ。今書くならよほどレベルが高くないと、と斜に構えて読み進めましたが……まさか「時空転移」をこう使うとは! 大胆なトリックはまさに鮎川賞マインド。我こそはミステリファンという方はぜひ読んで頂きたい。 (編集部 F.R)

見取り図あり! 登場人物一覧あり! 読者への挑戦状あり! 本格ミステリの様式美が詰まっている上に、タイムトラベルというSF要素まで! 騙されないぞと思って読み進めているのに、最後にはすっかり騙されてしまいました。 (編集部 H.W)

「愛する女性の命を救うため、時を越えて奔走する男」という定番の設定に、「館に閉じ込められた一族を襲う連続殺人」という本格ミステリ要素をたっぷり注入したら、こんなにも面白くなるのかと夢中になって読みました。SFミステリの新たな傑作! (編集部 I.S)

過去に遡行して、最愛の女性に待ち受ける死の運命を変えられるかもしれない――そんなファンタジックな設定が、本格ミステリのアイディアに惜しみなく注ぎこまれていく興奮。論理(ロジック)と魔法(マジック)が見事融合したデビュー作です。 (編集部 F.T)

呪われた一族、クローズドサークル、見立て殺人と、これでもかと本格要素を盛り込みつつ、そこにSFテイストを加えることでここまで斬新になるのか、と驚嘆しました。一気読み必至の傑作です。 (編集部 K.Y)

のめり込むように読みました! タイムトラベルという特殊な設定があるにもかかわらず、がっつり本格ミステリという絶妙なバランス感覚!  令和を代表する、新感覚ミステリであるとここに宣言します。 (営業部 F.T)





屍人荘の殺人 (創元推理文庫)
今村 昌弘
東京創元社
2019-09-11



探偵は教室にいない
川澄 浩平
東京創元社
2018-10-11