ベルリンを駆け、逃げながら真犯人を探せ。
ドイツ・ミステリ大賞受賞作家が抜群の緊迫感で贈るノンストップ追跡サスペンス!


ドイツ発、ページをめくる手が止まらないノンストップ・サスペンス『ベルリンで追われる男』(マックス・アンナス、北川和代訳)をご紹介いたします。

まずはあらすじを……。

ガーナ出身でベルリンに住むコージョは不法残留者だ。ねぐらにしている空きビルの窓から、向かいのアパートで男が売春婦を殺す瞬間を目撃してしまった。強制送還を恐れているため通報はできない。おまけにふとした行動が原因で、容疑者として警察から追われることに。町を疾走し、逃げ続けながら友人たちと真犯人を捜す彼を、さらなる危機が襲う。緊迫感に満ちた追跡サスペンス!


――不法残留の青年が殺人を目撃。だが容疑者として追われる身に。まさに息もつかせぬ極上のサスペンスに仕上がっています。その理由は、主人公が「不法残留」であること。

主人公のコージョはアフリカ、ガーナ出身の黒人。在留資格を所持してベルリンで暮らしていましたが、事件の3年前にNGOでの職を失ったがために不法残留者となってしまいました。トルコ人が多く暮らす地区にあるカフェの厨房で働きながら、当局の摘発を恐れる日々が続いています。

ドイツは移民大国です。2015年にも、メルケル首相が難民を受け入れる政策を掲げ、中東や北アフリカなどからたくさんの人々がドイツにやってきました。その結果、社会的な混乱が巻き起こり、ドイツは逆に難民流入を抑制する政策に方向転換することになりました。

また、ドイツ国民の中には反移民・反難民を訴える人々も多く、極右政党も台頭しているそうです。本書『ベルリンで追われる男』の原題Illegalは「不法残留者」を意味しており、彼らは3,40万人にのぼるともいわれています。

そのような社会的背景が殺人事件そのものの緊迫感ときちんと結びついているのが、本書の魅力だと思います。

例えば、こんなシーンも……。

すぐそこの角まで駆け、ようやくわれに返る。そこで足を緩めた。彼には理由があってジムに走りに通っているが、それは町中ですることではなかった。いかなる警察官も、通りを走る黒人は逃亡している黒人だとみなすからだ。

この文章を読んだときに、かなり衝撃を受けました。地区によるのでしょうが、「黒人が走っているだけ」で逃亡者だとみなすなんて! 黒人がドイツで生きるということがどういうことなのか、深く考えさせられます。コージョは常に恐れ、息をひそめて生きています。そしてさらに殺人の容疑で追われる身に。警察に通報したり、自分の潔白を訴えて捜査をしてもらえれば容疑は晴れるかもしれませんが、不法残留であることはばれてしまいます。そこで彼は友人たちと真犯人探しに乗り出すのです。

著者のマックス・アンナスは、1963年、ドイツ・ケルン市生まれ。地元誌の政治記者をつとめたあとフリーランスとなり、アフリカ文化に興味を持っていたことから、アフリカの映画やポップミュージックの製作、映画祭のキュレーターなど多彩な才能を発揮しました。2008年に南アフリカに住まいをうつし、小説の執筆をはじめます。帰国後、南アフリカを舞台とした第一作Die Farm(農場)を発表。以来、人種差別を作品に織り込みつつ、ミステリを刊行し続けています。
ジャーナリストの鋭い目線で描かれるベルリン社会の裏側と、抜群の緊迫感に満ちたノンストップ追跡サスペンスをどうぞお楽しみください!

『ベルリンで追われる男』(マックス・アンナス、北川和代訳)は9月20日ごろ刊行です。