近年、多くの方にご注目いただいている鮎川哲也賞。少年少女の淡い心模様が描かれ、爽やかな読み心地で好評を博した、川澄浩平さん『探偵は教室にいない』(第28回受賞作)。前代未聞の設定と奇想で、ミステリ界に革命を起こした、今村昌弘さん『屍人荘の殺人』(第27回受賞作)。

そしてこの度、それらの作品に先駆けて刊行され「21世紀の『そして誰もいなくなった』」として話題を呼んだ、第26回受賞作の市川憂人さん『ジェリーフィッシュは凍らない』が、文庫化されます!


舞台は、現実世界と良く似たパラレルワールド(1983年の、アメリカに似たU国)。その世界が現実と大きく異なっている点は、飛行機ではなく、特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉が日常で活躍していることです。

ある冬の日、〈ジェリーフィッシュ〉の発明者である、ファイファー教授たち技術開発メンバー6人は、新型〈ジェリーフィッシュ〉の長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいました。ところがその最中に、メンバーの1人が変死。さらに、試験機が雪山に不時着してしまいます。脱出不可能という状況下、次々と犠牲者が……。

本書は、綾辻行人さんの推薦文――

『そして誰もいなくなった』への挑戦であると同時に『十角館の殺人』への挑戦でもあるという。読んでみて、この手があったか、と唸った。目が離せない才能だと思う」

や、千街晶之さんによる解説の通り、「クローズド・サークルの殺人」を扱うミステリの系譜に、新機軸が誕生した、記念碑的作品です!

閉鎖状況という事件関係者の数が限られる中、意外な犯人をどう設定したのか?その犯人はどんなトリックを用いて、不可能犯罪をやってのけたのか? 普段はずぼらだけれど実は切れ者のマリアと、沈着冷静で皮肉屋の漣という、刑事コンビがたどり着いた真相には、あっと驚くこと間違い無しです。

また、単行本版と引き続き、装画を影山徹さん、装幀を鈴木久美さんが手がけています。ここで、クールで格好良いカバー制作の裏話をひとつ。
文庫化にあたり、影山さんから「〈ジェリーフィッシュ〉を色々な角度から見て構図を検討するため、模型を作って写真を撮ります」というご提案をいただきました。

実際に、影山さんが作成した〈ジェリーフィッシュ〉の模型写真を、今回は特別にお借りしました!

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球体の発泡スチロールを削り、脚に割り箸を用いて作った〈ジェリーフィッシュ〉です。とてもリアルです…!

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様々な角度、影の付き方などを検討し、採用された構図は、ぜひカバーでご確認下さい。

充実した内容の本文と、情熱が込められたカバーでお届けする『ジェリーフィッシュは凍らない』を、どうぞよろしくお願いいたします!