みなさまこんにちは。編集部SF班(妹)です。
連休中は祖父の誕生日に訪れた和食屋さんで、通されたお部屋の名前が「風雅」だったことに(漢字が違うのにもかかわらず)激しく反応して家族を困惑させたりしていました。

さて、昨年10月に門田充宏さんの第五回創元SF短編賞受賞作をふくむ短編集『風牙』が刊行されてから約半年。続編『追憶の杜』が明日発売です!


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人間の記憶をレコーディングし、他人にもわかるよう翻訳する技術を生みだした会社・九龍(くーろん)。
創業者の不二(ふじ)が倒れてからも事業を拡大し続けていたが、記憶データをめぐって起きたいくつかの事件により、世間から非難と疑いの目が向けられていた。
九龍に所属する記憶翻訳者(インタープリタ)の珊瑚は、恩師の不二と大切な居場所である九龍を守るため、事件の真相を探ろうとするが……。

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前作『風牙』には四つの短編が収録されていました。今回はシリーズ続編として、長めのお話三つで構成された中編集をお届けします。
一話目「六花の標」と二話目「銀糸の先」は記憶データや記憶翻訳に関係する事件の謎が主役の物語。そして、三話目「追憶の杜」は社長の不二が他界して半年後の珊瑚と九龍の人々が描かれます。
あらすじだけ聞くと、一、二話目と三話目でテーマも読み味もだいぶ異なっているように感じられるかもしれませんが、実際に通して読むと、記憶という目に見えない存在がわたしたちに何をもたらしてくれるのか、主人公の珊瑚自身が記憶翻訳という仕事を通してどんなふうに成長してきたのか、ということが伝わるのではないかと思います。

記憶というのは過去のもので、もう終わってしまったこと、今を生きていくためには前を向いて進み続けなければいけないと、わたしたちはついそんなふうに考えてしまいがちです。
でもそんな記憶が今の自分を、時には自分以外の人や物事を、大きく変えることがあるのだと、この作品は教えてくれるような気がします。

以前、『風牙』の刊行時にこの〈Webミステリーズ!〉で、「こんなに応援したい主人公はなかなかいない!」というようなことを書きました。
今回もそれは変わらず、時に無鉄砲に行動して上司に叱られたり、おとなしく言うことを聞くとみせかけてやっぱりじっとしていられなかったり、忙しすぎて洗濯物の山から着るものを選んだりしている珊瑚を応援せずにはいられない気持ちで読んできましたが、読みながらふと、「珊瑚に応援されているな」と気づいて驚きました。
『風牙』を読んで珊瑚を、そしてこのシリーズを好きになってくださったみなさまには、ぜひ本書も手に取っていただければ嬉しいです!
シリーズ作品ですが、一話完結タイプのお話ばかりなので、前作を未読の方はこの『追憶の杜』から読んでいただいても大丈夫です。その場合は森下一仁さんによる巻末解説を先にお読みいただくと入りやすいと思います。

『追憶の杜』は5月11日頃発売です。ぜひご期待ください。