司書のわたしに送られてきた奇妙なメール。
添付されていた音声ファイルでは、
人の言葉をしゃべる猫が、
自らの過去を語っていた!


世間的に猫の人気が高いのは間違いなく、猫の日(2月22日)には各地で猫イベントが開催されるとか。また、ミステリやホラー、ファンタジーなどとの親和性も高く、猫をテーマにした小説やノンフィクション、エッセイなどもたくさん刊行されています。弊社の創元推理文庫も、かつてジャンル分類マークとしてサスペンス、スリラーをあらわす「猫」がありました。

本書はまさに、猫と本をテーマにした不思議でブラックな物語です。――愛妻を亡くし、ケンブリッジの図書館を定年退職したばかりの司書の「わたし」のもとへ、ある日一通の奇妙なメールが届きます。添付されていたフォルダには、突然失踪した姉をさがす男の手記と、その女性に飼われていた猫に関する信じがたい情報がおさめられていました。猫はなんと人間の言葉をしゃべり、血も凍るような過去を語っていました。「わたし」は好奇心に駆られて、真偽を確かめようと調査にのりだします。予測不可能な恐ろしい事態に巻きこまれるとも知らずに……。

本書を読むと、猫とはかわいいだけの生き物ではないとしみじみ実感できると思います。この作品は、猫の邪悪さやそれゆえの魅力もしっかり描いているところがたまらなく面白いのです。

そして、この作品には文学にかんする言及も多く、本好きの心をくすぐります。エドガー・アラン・ポオ『黒猫』はもちろん、テニソンの詩の引用、『ジェーン・エア』〈シャーロック・ホームズ〉シリーズ、ヘニング・マンケルの〈刑事ヴァランダー〉シリーズなどなど、文学やミステリ、ホラー好きがニヤリとしてしまうこと間違いなし。ベテラン司書が主人公であり、図書館が重要な舞台となっていることも含めて、著者の本に対する深い愛情が感じられます。

著者のリン・トラスさんはイギリス生まれの作家で、コラムニスト、ジャーナリスト、BBCラジオのパーソナリティも務めています。さまざまなジャンルで活躍し、数多くの小説やノンフィクションを発表しています。2003年に刊行した句読記号(パンクチュエーション)の誤用についてのユーモアあふれる文法書『パンクなパンダのパンクチュエーション』は、イギリスとアメリカでそれぞれ100万部を超す大ベストセラーとなりました。この作品も、随所でニヤリとさせられるブラックなユーモアがあります。

とにかく独創的で面白い! 読み始めたら最後まで本を閉じられません。そんな物語をすばらしい本に仕上げてくださったのは、ブックデザイナーの藤田知子先生と、イラストレーターのかわいちともこ先生です。かわいち先生の描かれた表紙の猫、邪悪そうな感じがしてたまらないです。でも、実はこれだけではないのです。ぜひ本を実際にお手に取っていただき、帯下などもチェックしてみてください。

猫好きだけでなく犬好きも本書を楽しめること間違いなしです! ちなみに著者は、20年以上にわたって猫を飼い続けていましたが、本書の執筆後、犬派に転向したそうです。

ユニークで面白い、不思議な物語をどうぞお楽しみください!

■海外書評より

イギリスのブラック・ユーモアの伝統を受け継いだすばらしく奇妙な物語。
――〈デイリー・エクスプレス〉
 
すばらしい本へのオマージュでいっぱいの楽しい作品……素直に面白い!
――〈テレグラフ〉
 
M・R・ジェイムズに影響を受けた、からくり箱のような異彩を放つ小説だ。
――〈カーカス・レビュー〉
 
とにかく面白くて読むのをやめられない……ユーモアもあって最高だ。
――〈サンデー・テレグラフ〉

(東京創元社S)