みなさまこんにちは。翻訳ミステリ班Sです。このたび、江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集』(全5巻)のリニューアルが完了いたしました!! たくさんの方にリニューアルを喜んでいただき、編集作業の励みになっておりました。ありがとうございます。


最終巻となる『世界推理短編傑作集5』は、1936年初出のマージェリー・アリンガム「ボーダーライン事件」から始まり、1951年のデイヴィッド・C・クック「悪夢」までの短編小説の11編、そして最後にエラリー・クイーンが選ぶ長編・短編ミステリのベストテンを記載した論文「黄金の二十」が収録されています。全収録作と、旧版からの変更点につきましては、以下のリンク先の詳細ページをご確認ください。

ジョン・コリアー、ウィリアム・アイリッシュ、フレドリック・ブラウンなどの短編の名手によるキレのある傑作にくわえ、強烈な印象を残すQ・パトリックの犯罪小説「ある殺人者の肖像」、1945年という戦時下のアメリカでこんな話が書かれていたとは……と驚くこと間違いなしのベン・ヘクト「十五人の殺人者たち」などなど、もりだくさんです。

そして、みんな大好きカーター・ディクスンの「妖魔の森の家」も5巻に収録となりました! かつては「見知らぬ部屋の犯罪」でしたが、『世界推理短編傑作集1』の戸川安宣氏の解説のとおり、編者・江戸川乱歩先生の意を汲んで差し替えとなりました。旧版の『世界短編傑作集』が編まれたときには版権の関係で収録できなかったのですが、今回は権利を取って、めでたくアンソロジーにおさめることができました。謎解き短編のお手本ともいえる超名作ですので、必読ですぞ!!!

リニューアルの際に戸川安宣氏によって、かつてはわからなかった各短編の「発表年」(初めて雑誌掲載された年など)が新たに特定されました。そして本アンソロジーは「発表年代順」に収録されているため、全5巻のうちで作品の移動がたくさんありました。例えば、マージェリー・アリンガム「ボーダーライン事件」はかつては3巻に収録されていましたが、リニューアルにあたり5巻に移動になりました。各巻の印象も大幅に変わったと思うのですが、こちらの新版もぜひご愛読いただけますと幸いです。

 最後に、御礼を申し上げたいと思います。

すばらしい新訳で作品を生まれ変わらせてくださいました翻訳者の先生方、このアンソロジーのリニューアルを担当し、ミステリ愛に満ちた解説を書いてくださった戸川安宣氏、上品ですてきなカバーイラストを描いてくださった伊藤彰剛先生、クラシカルかつスタイリッシュなカバーデザインにしてくださった柳川貴代先生に、厚く御礼を申し上げます。そしてもちろん、偉大な翻訳者の先生方の御訳文を再収録させてくださいました著作権継承者のみなさまに深く感謝しております。

本作りに関わってくださったたくさんの方々、また、宣伝にご協力くださったり、書評で取り上げてくださったり、さまざまな方にお世話になりました。ありがとうございました。そして最後に、戸川氏の解説の校閲ですさまじい調査能力を発揮してくれた弊社校閲部のみなさん、本当におつかれさまでした。

2019年という創元推理文庫60周年の年に、東京創元社を代表する傑作アンソロジーのリニューアルを完結できましたことをうれしく思います。今後もたくさんの方に読んでいただき、ミステリの面白さ、奥深さを感じていただければ幸いです。そして10年後、20年後、50年後でも、ずっと読み継がれているといいなと思います!