2019年は、ミステリ界の魔術師・泡坂妻夫の没後10年にあたります。その節目にあたる今年、創元推理文庫では2月に丸善150周年記念として『妖女のねむり』を復刊し、4月に泡坂妻夫引退公演 絡繰篇手妻篇を刊行しました。
その他、くせ者の刑事が活躍する〈海方惣稔(うみかたふさなり)〉シリーズの、『死者の輪舞』『毒薬の輪舞』が河出文庫から刊行されたりと、泡坂作品の刊行がめでたく続いています。

そんな中、〈亜愛一郎〉〈ヨギ ガンジー〉と並ぶ著者の代表シリーズの名探偵が、この度創元推理文庫にて復活いたします!その名も、奇術探偵・曾我佳城。若くして引退した美貌の奇術師にして、優れた名探偵でもある女性です。普段は多くを語らない物静かな彼女ですが、奇術絡みの事件に遭遇する度に、まるで奇術の種明かしをするかのごとく、鮮やかに不可解な謎を解決します。

奇術師という顔も持っている著者だからこそ描けた、〈曾我佳城〉シリーズ。シリーズは、佳城が1980年に「天井のとらんぷ」で初登場してから、2000年に発表された最終話「魔術城落成」で作品舞台を去るまで、20年にわたって活躍が描かれました。
全短編を収録した『奇術探偵曾我佳城全集』(講談社)は2000年に刊行され、『このミステリーがすごい!2001年版』国内部門第1位、2001年版「本格ミステリベスト10」第1位を獲得しました。

奇術ミステリとしても本格ミステリとしても楽しめる傑作シリーズを、創元推理文庫に収録できるのはとても光栄です。同時に、亜愛一郎やヨギ ガンジーと共に、曾我佳城をお迎えすることで、主要な泡坂作品の名探偵が揃うため、感慨深いものがあります。実は、曾我佳城は創元推理文庫とは、ちょっとしたご縁があるのですが…(『夜光亭の一夜 宝引の辰捕者帳ミステリ傑作選』を読めば分かるかも?)。

現在、2019年冬の刊行に向けて準備を進めております。ちなみに、収録順は単行本版と同じ発表順を予定しています。新たな形で登場する『奇術探偵曾我佳城全集』を、どうぞお楽しみに!