緻密な伏線と論理展開の妙、愛すべきキャラクターなどで読者を魅了した、ミステリ界の魔術師・泡坂妻夫。偉大な魔術師がこの世を去ったのは2009年。それから10年経った今年、新たな形の作品集をお届けできることになりました!

本書は、著者の生前、単行本に収録されなかった短編小説などを収めた、函入りの作品集『泡坂妻夫引退公演』を、二分冊に文庫化したものの一冊です。『絡繰篇』には、傑作17編を収録しています。収められているのは、以下の作品などです。

大胆不敵な盗賊・隼小僧の正体を追う「大奥の七不思議」ほか、江戸の雲見番番頭・亜智一郎が活躍する時代ミステリシリーズ。
五節句の紋をあしらった着物にこめられた想いを読み解く「五節句」ほか、紋章上絵師たちの人情と日々を描いたシリーズ。
背中に見事な彫物を持つと評判の美女を巡る「荼吉尼天(だきにてん)」といったノンシリーズ。

幕末という時代だからこそ起こる謎を扱った、時代ミステリならではの面白さや、紋章上絵師という顔も持っている著者だからこそ描ける、紋章にまつわる人情の滋味深さが味わえます。
また、単行本版から加筆修正した、編者の新保博久さんによる解説も見逃せません。

早川洋貴さんが贈る、泡坂作品めいた迷宮を描いたカバーが目印です。同時刊行される、対となる作品集『泡坂妻夫引退公演 手妻篇』と共に、どうぞお楽しみください!

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収録作品一覧:

【亜智一郎】
大奥の七不思議
文銭の大蛇
妖刀時代
吉備津の釜
逆鉾の金兵衛
喧嘩飛脚
敷島の道

【幕間】
兄貴の腕
五節句

【紋】
三国一
匂い梅
逆祝い
隠し紋
丸に三つ扇
撥鏤

【幕間】
母神像