新年あけましておめでとうございます。

恒例となっております、元旦の特別企画。2019年に刊行される予定の翻訳ミステリとノンフィクションのラインナップをご案内いたします。今年は創元推理文庫創刊60周年のメモリアルイヤー! 例年にも増して、良い作品のご紹介に努めたいと思います。本年もご愛読のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。

(日本語タイトルは一部を除き仮題です)

【名作ミステリ新訳プロジェクト】
すでにお知らせしたとおり、創刊60周年記念企画として、1月から「名作ミステリ新訳プロジェクト」がスタートします。


これはその名のとおり、これまで日本の読者に親しまれてきた名作ミステリを新訳でお届けする企画で、4月までは以下のラインナップが決定しています。

1月 アガサ・クリスティ/深町眞理子訳『ミス・マープルと13の謎』
2月 F・W・クロフツ/霜島義明訳『クロイドン発12時30分』
3月 A・A・ミルン/山田順子訳『赤い館の秘密』New!
4月 エラリー・クイーン/中村有希訳『Xの悲劇』New!
 (以下続刊)

5月以降の刊行作品も順次お知らせいたしますので、どうぞお楽しみに!

【強烈プッシュ作】
TheWordIsMurder■アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭訳
The Word Is Murder
ある五月の午前中、ダイアナ・クーパーはひとりで葬儀社を訪れ、自分の葬儀について、何から何まできっちりと手配をした。そして、その六時間後、自宅で何者かに絞殺される。自分の葬儀の手配をしていた当日に殺されたのは偶然の出来事なのか? ちょうど『絹の家』を書きあげ、妻と祝杯をあげていたわたしアンソニー・ホロヴィッツは、ひょんなことから、怪しげな私立探偵ホーソーンとこの不思議な事件の捜査をするようになる――。4冠制覇『カササギ殺人事件』が切り拓くミステリの新たなる地平。

HerEveryFear■ピーター・スワンソン/務台夏子訳
Her Every Fear
ロンドンに住むケイトは、留学のため、従兄のコービンと半年間住まいを交換しボストンで暮らすことになった。だが、到着した翌日にアパートの隣室の女性が他殺体で発見される。近所の人々の話だとコービンと女性は交際していたらしいが、コービンはケイトに、彼女とは特に親しくなかったと告げた。なぜ関係を隠すのか? 誰かがケイトに嘘をついているのか? 『そしてミランダを殺す』の著者が巧みな視点切り替えとレッドへリングを駆使して贈るスリリングな傑作!

Strafeフェルディナント・フォン・シーラッハ(ドイツ)/酒寄進一訳
『刑罰』(単行本)
証人が抱える孤独感に同情した参審員。無実と確信して弁護した依頼人が釈放後に子供を殺したことに衝撃を受け、荒れた弁護士。高級ホテルのスイートルームで麻薬常習者になっていたエリート男性。――「刑罰」の世界からこぼれ落ちた、だが確かに存在する罪人たちを、繊細で鋭利な筆致で描き出す。本屋大賞「翻訳小説部門」第1位『犯罪』、第二作『罪悪』に連なる短編集、ついに刊行!

■ホーカン・ネッセル(スウェーデン)/久山葉子訳
Intrigo『悪意』(単行本)※2月刊!
「トム」夜中にかかってきた一本の電話、それは二十二年前に死んだはずの息子からのものだった。「レイン」亡くなった著名な作家の遺作には母国語での出版を禁じ、翻訳出版のみを許可するという、奇妙な条件が付されていた。「親愛なるアグネスへ」夫の葬式で久し振りに会ったかつての親友、二人の交わす書簡はやがて……。デュ・モーリアの騙りの妙、シーラッハの奥深さ、ディーヴァーのどんでん返しを兼ね備えた必読の短編集。

【名匠たちの最新作】
ItalianShoesヘニング・マンケル(スウェーデン)/柳沢由実子訳
『イタリア製の靴』(単行本)
医師を引退しひとり島に住む男フレドリック。ある日彼のもとに、三十年以上前に捨てた恋人ハリエットがやってくる。治らぬ病に冒された彼女は、昔の約束を果たしてくれるよう求めに来たのだ。かつての恋人の願いをかなえるべく、フレドリックは島をあとにする。〈刑事ヴァランダー〉シリーズの著者が、人生の黄昏を迎えた男女のドラマを描く問題作。

■ロバート・クレイス/高橋恭美子訳
『指名手配』
ロスの私立探偵エルヴィス・コールは、息子のことを調べて欲しいという母親の依頼を受けた。調べてみると、少年が仲間とつるんで裕福な家からの窃盗を繰り返していることがわかる。だが、コールの先回りをするかのように、何者かが少年の仲間を殺し、証人の口を塞いでいた。少年の身も危険に晒されているのか。『容疑者』『約束』に続く第3弾登場!

■フランシス・ハーディング/児玉敦子訳
『カッコーの歌』(単行本)※1月刊!
「あと七日」意識を取りもどしたとき、耳もとで言葉が聞こえた。 わたしはトリス、池に落ちて記憶を失ったらしい。少しずつ思い出す。母、父、そして妹ペン。ペンはわたしをきらっている、憎んでいる、そしてわたしが偽者だと言う。なにかがおかしい。破りとられた日記帳のページ、異常な食欲、わけのわからない恐ろしい記憶。そして耳もとでささやく声。「あと六日」……わたしに何が起きているの? 『嘘の木』の著者が放つ、傑作ファンタジー。英国幻想文学大賞受賞、カーネギー賞最終候補作。

【期待の新作登場!】
■エリー・アレグザンダー/越智睦訳
『ビール職人の醸造と推理』※3月刊!
シアトル近郊のレブンワースは、ビールで有名な小さな町。町で一番のブルワリーを夫とその両親と切り盛りしていたわたしは、平和な日々を過ごしていた――夫マックの浮気が発覚するまでは。わたしは夫を追い出し、町に新しくオープンするブルワリーで働くことにする。フルーティーながらもすっきりした後味のビールや、腕によりをかけたわたしの料理のおかげで、開店初日は大成功! しかし翌朝、店で死体が発見されて――。

■ロバート・ロプレスティ/高山真由美訳
『ロプレスティよりぬき傑作短編集』
コーヒーショップの常連が殺害された。ツケをチャラにするため、犯人捜しに乗り出した自称詩人の推理とは?(「赤い封筒」)貸しオフィスに銃を持って押し入り、その場にいた職員に‟憎みあう三人の男たちの物語”を聞かせた男の目的とは?(「ふたりの男、ひとつの銃」)正統派の謎解きミステリ、ショートショート、奇妙な味などなど、『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』で人気を博した著者のとっておきの短編9編!

Sourdough■ロビン・スローン/島村浩子訳
Sourdough(単行本)
「本」の次は……「パン」!? サンフランシスコでプログラマとして働きはじめたロイスの心身を救った宅配レストランのおいしいパンとスープ。レストランを営む兄弟がアメリカを去るとき、パン種となる酵母をプレゼントされた彼女は、独学でパンを焼いてみることに。その衝動がロイスを、思いも寄らない世界へ連れていく……。「歌う」酵母に「笑う」パン、酵母を守りつづける不思議な一族の伝説、ロボットアームや最新科学技術を利用した食材の数々、謎の地下ファーマーズ・マーケット……『ペナンブラ氏の24時間書店』のスローンが奔放な空想力でつづる、後味さわやかなフード・エンタテインメント!

【人気シリーズ最新刊】
■ポール・アダム/青木悦子訳
『ヴァイオリン職人と消えた北欧楽器』
ヴァイオリン職人のジャンニは、ヴァイオリン製作学校の教師でもある。20年前の教え子であるノルウェー人が講演を行ったが、翌朝死体が運河で発見される。死因は溺死だが殴られた跡があり、持っていた北欧の楽器が消えていた。ジャンニは友人の刑事アントニオとともにノルウェーに向かうが……。「続きが読みたい」の声に応えてお贈りする『ヴァイオリン職人の探求と推理』シリーズ最新作! 創元推理文庫60周年記念、日本オリジナル作品。

キャロル・オコンネル/務台夏子訳
『暗闇で起こること』※3月刊!
劇場で客席最前列の男が、暗闇のなか喉を掻ききられて死んでいた。男は上演中の芝居のもと脚本家。駆けつけたマロリーとライカーは捜査を開始する。だが、劇場の関係者は、俳優から“使い走り”に至るまで全員が変人ぞろい。おまけに、ゴーストライターなる人物が、日々勝手に脚本を書き換えているという。ゴーストライターの目的は? 殺人事件との関わりは? 氷の天使マロリーが、舞台の深い闇に切り込む。好評シリーズ。

  ■エドワード・D・ホック/木村二郎訳
『怪盗ニック全仕事6』※1月刊!
40年以上にわたり「価値のないもの、誰も盗もうとは思わないもの」ばかり盗み続けてきた天下無双の大泥棒の活躍譚も、ついに最終巻。巨大な石像の首、結婚式で飛ばす鳩などを意外な方法と思わぬ理由により盗み出す通常営業の短編から、恋人との出会いやライバル〈白の女王〉との共演などファン必読のエピソードまで、本邦初訳8編を含む全14編を収録。文庫版全集、堂々の完結!

【非英語圏の俊英たち】
■マックス・アンナス(ドイツ)/北川和代訳
Illegal
ガーナからベルリンに来て不法滞在者している青年コージョは、アパートの窓から殺人を目撃してしまう。向かいの部屋には金髪の娼婦が住んでおり、白人の客が殺してしまったらしい。警察に通報できないコージョは、せめて様子を見ようと現場に向かい、犯人と思しき男とすれ違う。しかもそのとき顔を見られてしまい、命を狙われることになり――。不法滞在者の青年が、警察と犯人から追われるなか真相を探る。ドイツ・ミステリ大賞受賞作家が贈る快作!

■ビクトル・デル・アルボル(スペイン)/宮﨑真紀訳
LA TRISTEZA DEL SAMURÁI ※3月刊!
1980年のバルセロナ。弁護士のマリアは、政治捜査局の警部が情報屋を制裁した殺人未遂事件で、警部を終身刑へ追い込んだことで名声を得た。だが数年後の今、その事件が何者かの陰謀によって仕組まれていたと判明する。マリアは再調査をはじめ、自らの血の桎梏と体制側の恐るべき策略を知る。殺人、偽証、復讐に彩られた、抗えない運命へのやるせなさが滲む圧巻の人間ドラマ。ポラール・ヨーロピアン大賞受賞、激動のミステリ!

■フレッド・ヴァルガス(フランス)/田中千春訳
『ネプチューンの爪痕』
30年前にアダムスベルク警視の兄が容疑者のひとりとなった、ネプチューンと呼ばれる殺人鬼による連続殺人事件。今、ふたたび、ネプチューン事件と同じ手口で殺害されたと思われる女性の死体が発見された! 三つの刺し傷のある死体が……。殺人鬼ネプチューンがよみがえったのか? フランス・ミステリの女王ヴァルガスの傑作。『青チョークの男』『裏返しの男』のアダムスベルク警視シリーズの一冊、CWA賞受賞作!

■アントニオ・マンツィーニ(イタリア)/天野康明訳
『汚れた雪』
イタリア・アルプス山麓の町、アオスタの警察副署長スキャヴォーネは、愛妻家だが、マッチョで荒っぽく皮肉屋で、悪に手を染めることさえあるという男。アオスタに赴任したのも、ローマでの不祥事が原因で飛ばされたのだった。そこで遭遇した事件は、スキー場で圧雪車にひかれた男の死体発見から始まった。この死体は殺されて雪に埋められたものだった。刑事コジャックを思わせる一匹狼的な警察官が魅力の読み応えある刑事もの。

『言語の第七番目の機能――ロラン・バルトを殺したのは誰か?』(単行本)
哲学者で記号論学者、ロラン・バルトの事故死はミッテランとの昼食を終えてすぐのことだった(翌年ミッテランはジスカール・デスタンを破り第21代仏大統領となった)。これは臭い……。捜査を開始したバイヤール警部。事件の鍵は「言語の第七番目の機能」という謎の論文。秘密結社の存在、フーコー、ソレルス、クリステヴァ、ドゥールーズ、アルチュセール、デリダ、エーコ……知識人や政治家たちが乱舞し、記号論的(?)超ドタバタ・ミステリにして、言葉の力について考えさせる驚くべき一冊。アンテラリエ賞、Fnac小説大賞受賞。

【古典発掘・名作新訳版】
■小森収編/深町眞理子、猪俣美江子他訳
『海外ミステリアンソロジー』(全5巻)
Webミステリーズ!好評連載「短編ミステリ読みかえ史」から生まれる、もうひとつの『世界推理短編傑作集』ともいえる傑作アンソロジー! 知見に富むエッセイと名作ぞろいの短編でひもとく、3つの世紀にまたがる短編ミステリの歴史。収録作品は『世界推理短編傑作集』との重複なし、すべてが新訳となる。第1巻にはウールリッチ、サキ、ビアス、フォークナー、モーム、ラードナーなどの全12編を収録。

【必読ノンフィクション】
■ウィリアム・ダルリンプル、アニタ・アナンド/杉田七重訳
『コ・イ・ヌール――史上最も呪われたダイヤモンドの歴史』(単行本)
英国女王の王冠に飾られているコ・イ・ヌールは、「光の山」という名に恥じぬ世界最大のダイヤモンドとして、遠い昔から数々の権力者に崇められてきた。だがそのダイヤモンドをめぐっては、事実であるとは信じがたい凄絶な歴史があった――あのエリザベス女王が身につけることを拒否するほどの。古代ペルシャやアフガニスタンの神話や歴史書をはじめ、数々の資料を狩猟し、現代科学の粋を集めることで、謎のダイヤモンドを覆ってきた迷信と虚妄の分厚い霧を晴らす、面白さ無類の渾身のノンフィクション。

■シェーン・バウアー/満園真木訳
『アメリカン・プリズン――民営刑務所潜入記』(単行本)
著者はアメリカの刑務所の問題に関心を持ち、国内最大の民営刑務所運営会社の運営するルイジアナ州のウィン矯正センターの面接を受けて採用され、刑務官として働きはじめる。時給はスーパーのアルバイトと同等の9ドル。そこで彼は刑務所を営利企業が運営することの現実――囚人が外部の医療機関にかかった場合の費用は刑務所持ちなので、医療費は極端に削られるなど――を目撃することになる。衝撃のノンフィクション!

■テイラー・J・マッツェオ/羽田詩津子訳
『イレナの子供たち』(単行本)※2月刊!
ポーランド人イレナ・センドレルは、第二次大戦中にナチス占領下ワルシャワのゲットーから2500人ものユダヤ人の子供たちを木箱に入れたり、ゴミ袋に隠したりして命を賭して脱出させた、女性版シンドラーと呼ばれる人物である。ゲシュタポに捕われ拷問を受け、死刑宣告を受けたりもしたが、からくも命をとりとめ、ノーベル平和賞候補にまでなった。彼女の活動とその人生は、資料とインタビューでつづった感動的なノンフィクション。


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(2019年1月1日)