はじめに

 SFに限らない話ですが、小説の発表の場は、この十年ほどでさまざまに変化しました。

 なかでも短編は変化が著しく、創元SF文庫の《年刊日本SF傑作選》収録作が象徴的なのですが、最初の発表媒体は、この五年ほどで急速に広がっています。

 それまではほとんどが小説誌に発表されていたものでしたが、増刊号やオリジナル・アンソロジーがたびたび企画されるようになりました。同時にウェブでの小説の公開も一般的となり、さらに電子書籍オリジナルや創作同人誌が話題になる時代にはいって、アマチュアとプロの境界も曖昧になってきています。

 そうした多様化は、新しい読者層にとってSFに巡り会う機会が増えているということでもありますが、一方で分散しているともいえるのかも知れません。

 だからこそ、著者と読者が集える、まとまった、継続的な場所が必要だと考えました。


 SFは時代とともに変化しつづけますが、その精神は受け継がれています。

 来年で十回目を数える創元SF短編賞が送り出してきた数々の才能は、さいわい毎年のように皆さんに注目・評価していただき、一定以上の成果をあげてきたと自負しています。彼らに加えて《年刊日本SF傑作選》で御縁のあった方々にもお力添えをいただき、ここに創元日本SFのフラッグシップとなる書き下ろしSFアンソロジーを創刊いたします。

 かつて、海外の出版界の人々と会うたびに、決まってこんな自己紹介をしたものでした。

 “We are Tokyo-Sogensha. Sogen means Genesis.”

 東京創元社の新しいアンソロジー・シリーズの名称を、だから、Genesis と名付けました。


 ジェネシス──創世。ここから始まる。