双六の上手といひし人に、その行(てだて)を問ひ侍りしかば、「勝たんと打つべからず、負けじとうつべきなり。いづれの手かとく負けぬべきと案じて、そのてを使はずして、一目(ひとめ)なりともおそく負くべき手につくべし」(徒然草第百十段)


 勝負事には、結果として勝ちと負けがある。お互いに勝つために工夫する。勝たなければ意味がないと思っている。それを負けないようにというのは、面白い。

 囲碁も勝負事であり、勝ちたいと思って打つのは自明のことである。ただ勝ちたいという気持ちが逸って、無理な手を打ってしまうことがある。そしてその無理が通って、百戦百勝というわけにはいかないまでも勝つことがある。無理な手で勝つと、いつも無理をするようになり、感覚がずれてくる。そして肝心のときに負けてしまう。上手と対局すれば、無理な手は通用しないと思って間違いない。上手に伍するには、正確な対応や読みが必要なのだ。

 本書は、定石、布石、石の働き、削減と攻めなどに焦点を合わせて、囲碁の大局観と感覚を磨くためのものである。本書を読めば、自分の打つ手のどこが間違っているのかが見えてくる。いつも無理な手を打って、苦しい碁を打っている人には、謂わば、リハビリの本でもある。まさに「負けないように打つ」ための打ち方が身に着く本なのである。