プロサッカークラブのホペイロ(用具係)を務める坂上栄作のドタバタを、
愛嬌たっぷりに描いた、ほのぼの連作ミステリ、第二シーズン開幕。
(10年8月刊『幸せの萌黄色フラッグ』あとがき[全文])
井上尚登 naoto INOUE
どうも。井上です。
ワールドカップ・南アフリカ大会では日本代表がまさかのグループリーグ突破! はじまるまえは一勝できたら絶賛するべきだな、なんて考えていたので、この結果は大絶賛ものです。なによりも驚いたのは、突然の戦術変更にも対応できた選手たちの潜在能力。それと前線を担当した欧州経験者たちが、身体の大きな者たちへの対応に慣れていたことも勝因のひとつのように思います。
さてワールドカップがサッカーの頂点だと言うと、またどこかから文句がでるのでしょうが、サッカーファン以外にも影響をおよぼす力を持っているという点では、頂点と言っても差しつかえないように思います。
ワールドカップを頂点とすると、その下には各大陸、その下には各国、それぞれの国にはプロリーグがあり、さらにその下には……というふうに、裾野のようにサッカーの組織は広がっています。日本ではそのひとつに各都道府県のサッカーリーグがあります。とりあえずJリーグを目指すクラブはここからスタートを切り、ひとつひとつ階段をのぼるわけです。といってもすべてのクラブが上を目指すわけではなく、仲間たちと楽しい時間を過ごすためにリーグ戦を戦ったり、企業のクラブとして試合をしたりと形態はさまざまです。
さて僕の住んでいる町にもとうとうJリーグから準加盟承認をされたクラブが生まれました。将来、Jリーグに昇格するための条件だけはクリアしたよ、あとはがんばって成績をあげなさい、というわけです。しかしまだ県の社会人リーグに所属し、その上に地域リーグ、さらにJFLがあり、そしてようやくJ2です。先は長いわけで、でも隣の町にはすでにJFLに所属するクラブもあり、今年はどうも調子がいいようです。うちの町のクラブもなんとかがんばってほしいな。将来、隣町のクラブと小田急線ダービーなんてのがあるといいな。どちらのホームスタジアムも小田急線からちとはなれているんですけどね、とりあえず。
ただサッカークラブはお金がかかるので、むちゃな補強とかするとあっという間に財政危機になっちゃいます。そこら辺を考えて、地味にしかし着実にJリーグへの階段をのぼってくれるとうれしいです。なによりも自分の町にサッカークラブがあるってのが、大切なんじゃないかな、と思うわけで。無理せずされど望みは高く。そんな感じでがんばってほしいものです。
■ 井上尚登(いのうえ・なおと)
1959年神奈川県生まれ。東海大学卒業。99年『T.R.Y.』で第19回横溝正史賞を受賞しデビュー。同作は織田裕二主演で映画化し話題となる。著作は他に『C.H.E』『キャピタルダンス』『リスク』『T.R.Y.北京詐劇』『クロスカウンター』『厨房ガール』『ホペイロの憂鬱』がある。サッカーをはじめとしたスポーツ通としても知られ、夕刊紙にコラムを連載中。
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