ただいま「翻訳ミステリ13の扉」を公開しております。これは、2012年6月~9月刊行の作品のなかから、翻訳ミステリ編集者が自信を持っておすすめする13冊をピックアップした特設ページです。

 たいへんおまたせしてしまいましたが、13作品を翻訳された訳者の方々のコメントの第二弾を掲載しました。第一弾はこちらで読むことができます

 なお、作品を読まれた方は感想をTwitterでハッシュタグ「#tsg13doors」をつけて投稿していただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします!

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月に歪む夜
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*第8の扉
『月に歪む夜』
ダイアン・ジェーンズ/横山啓明 訳


【訳者コメント】
初めてこの作品を読んだ時、なんといっても50代の主人公の語り口に魅せられましたね。いったい彼女の過去になにがあったのか? 現代と過去を行き来しながら徐々に明らかになっていく人間関係の歪み。ああ、怖い。髪を伸ばし、汚い格好をし、放浪を気取れば精神的に深い人間であるかのように錯覚していた70年代のヒッピー世代、そんな主人公たちのあいだで起きた悲劇が、今、再びよみがえろうとしている……。面白そうでしょ? いや、面白いのです。ぜひ、読んでね!


闇のしもべ 下
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闇のしもべ 上
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*第9の扉
『闇のしもべ』上
イモジェン・ロバートスン/茂木健 訳


【訳者コメント】
18世紀後半のイングランド社会と世界情勢を詳密に反映させながら、時と場所を隔てて生きる様々な階級の人間を巧みに絡ませ緊迫感を高めてゆく著者の手並みには、これがデビュー作かと驚嘆させられます。イギリスでは歴史小説家としての評価も高いようで、その理由も本作を読めば容易にご理解いただけるでしょう。1780年夏、大都会ロンドンにさえ未だ街灯がない闇夜の奥で、怨讐と悲哀が激しく渦を巻きます。


ディミター
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*第10の扉
『ディミター』
W・P・ブラッティ/白石朗 訳


【訳者コメント】
夏来健次さんによる解説が本当にすばらしいので、ぜひそちらをお読みください。


ファイアーウォール 下
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ファイアーウォール 上
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*第11の扉
『ファイアーウォール』上
ヘニング・マンケル/柳沢由実子 訳


【訳者コメント】
南スウェーデンの片田舎町イースタ。ヘニング・マンケルがここを舞台に警察官クルト・ヴァランダーのシリーズを書いたため、平凡な港町がすっかり有名になった。この夏入手した町のガイド紙には、三か国語でヴァランダーの足跡をたどりながら中世の美しい町イースタを案内するとある。今回の作品はヴァランダーのもっとも苦手なコンピュータ世界を主題としたもの。イースタ周辺ののどかな田舎とIT世界。いまやどちらがヴァーチャル・リアリティなのかわからない気がする。


冷たい川が呼ぶ(下)
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冷たい川が呼ぶ(上)
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*第12の扉
『冷たい川が呼ぶ』上
マイクル・コリータ/青木悦子 訳


【訳者コメント】
弱冠三十歳ですでに各賞の常連候補となっているコリータの第二弾は、その卓越した描写力が遺憾なく発揮された物語となりました。今回は実在の超豪華ホテルと周辺のゆたかな自然をバックに、この世にないものまでを、映画のようにあざやかに見せてくれます。そしてスピーディでありながら緻密で叙情的なストーリー。今回の物語の鍵である「大いなる望み」を抱いた人々がそれぞれにどう生き、何をなしとげ、どういう結末を迎えたのか。それを本書でたどり、人間の可能性や弱さ愚かさ、そして強さや優しさについて何かを感じていただければ、これ以上の幸せはありません。


マッドアップル
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*第13の扉
『マッドアップル』
クリスティーナ・メルドラム/大友香奈子 訳


【訳者コメント】
ひっそりと昼間もカーテンを閉じた家。その繭のような家で母とふたり、少女は外界と接触を持たずに成長した。だが母の死が、少女を外の世界へと導く。
神話と宗教、そして薬草。丹念に織りあげられた濃密な神秘世界と、スピーディな法廷劇。過去と現在が交錯する。
緩急の効いた構成に引きこまれ、気づくと物語世界の虜になっている雰囲気に満ちたミステリです。
扉を開いたあなたは、もう戻れない。

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 先生方、どうもありがとうございました。「翻訳ミステリ13の扉」では、「全冊購読キャンペーン」も行っております。すでに続々とご応募があり、編集部では大変喜んでおります。締め切りは11月30日ですので、どしどしご応募ください!!
(2012年9月5日)




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