プレンティス総統率いるアスク隊に入れられたトッド。ミストレス・コイル率いるゲリラ部隊のアンサー軍に加わったヴァイオラ。
 トッドはプレンティス総統に気に入られ、その有能さから心ならずも総統の片腕と目されるまでになった。一方ヴァイオラは、苦悩しながらもゲリラの活動に深入りしていく。
 想い合うふたりは、こんどこそ本当に敵同士に属することになってしまった。すれ違う心、届かぬ叫び。
 だがそんな人間同士の争いを飲み込まんばかりの大軍が、ニュー・プレンティスタウンに迫っていた。虐げられ続けていた土着の生き物スパクルがついに蜂起したのだ。
 そこには、以前トッドが逃がしたひとりのスパクルの姿が……。
 帰還(リターン)と呼ばれるそのスパクルは、人間、とりわけトッドに対する憎しみに燃えていた。

 そんなとき、ヴァイオラがきた移住船から、地上の様子を探るために探査機がやってきた。乗っているのはヴァイオラにとってはなつかしい教師でもあるシモーヌとブラッドリー。だが、権力を独占しようとするプレンティス総統と、暴力的なゲリラ軍の指導者ミストレス・コイルは探査船の強力な武器を利用しようと画策、互いを信用しないまま共通の敵を前に足踏みをしていた。

 移民船の着陸を前に、スパクルと人間との和解は成るのか? トッドとヴァイオラは、なんとか二つの民族の和平まとめようとする。一方スパクル側には意外な情報源が……。


 カーネギー賞受賞。『怪物は囁く』の著者が贈る、驚異の3部作完結。巻末に三部作の前日譚に当たる付録短編「新世界」を収録。



 理由もわからぬまま故郷プレンティスタウンを追われた少年トッドは、植民船に乗って宇宙から来た少女ヴァイオラと共に、ひたすら逃げた。
 逃げて逃げて、ようやくたどり着いた平和な地、人々がノイズから解き放たれているという、伝説の地ヘイヴンでふたりを待ちかまえていたのは、男ばかりの軍隊を率いヘイヴンを制圧せんとする、プレンティス首長だった。
 銃で撃たれ瀕死のヴァイオラの治療とひきかえに、無理矢理首長の部下にされたトッドは、腹心のひとりとして首長の息子のデイヴィと行動をともにすることになる。
 一方、怪我の治療をしてもらったことがきっかけで、プレンティス首長の支配に反対する女たちと行動を共にするヴァイオラ。それは女性を中心としたレジスタンス組織。かつて土着の生きものスパクルとの戦いで活躍したアンサー部隊だった。
 彼らは狡猾でタフな女指導者ミストレス・コイルのもと、ヘイヴンを支配下におさめたプレンティス首長にゲリラ戦を挑んでいたのだ。

 一方トッドは、デイヴィとともにアンサー隊に対抗するべくつくられたアスク隊の指令官にされてしまう。彼らの仕事は、奴隷として働かされているスパクルに外すことのできない腕輪をはめること。そしてスパクルを使役すること。
 つらい仕事に心すさむトッド。それに追い打ちをかけるように、さらにひどい任務が。
町の女たちのすべてにスパクルと同じ腕輪をつけろというのだ……。

 アスク部隊とアンサー部隊。腹を探り合い、罠をかけあうふたつの陣営。味方ですら信じられない状況。

 互いを案じ、思い合う心ゆえに苦しむトッドとヴァイオラの行く手には、さらに過酷な運命が待ち受けていた。
コスタ賞受賞、シリーズでビッグタイトルを独占した驚異の三部作。20カ国で出版。英米で100万部を突破したシリーズ第二弾。



 ぼくはトッド・ヒューイット。あとひと月で十三歳、つまり正式な大人になる。
 ぼくの両親はいない。死んでしまった。
 ぼくは育ててくれたベンとキリアンと一緒にプレンティス・タウンの外れの農場に住んでいる。
 プレンティス・タウンはこの新世界のたったひとつの町。そしてぼくはこの町でたったひとりの子どもだ。
 この星に植民したぼくらは、土着の生き物スパクルと戦争になった。そしてやつらが撒いた細菌のせいで女は死に絶え、男は互いの考えてることがすべて“ノイズ”として聞こえるようになってしまったのだ。

 ある日、町にあふれる大人たちのノイズから逃れるように行った沼地で、ぼくはノイズのないまったくの静寂に出会った。これは何?それとも誰? 

 トッドが出会ったのはひとりの少女だった。はじめて見る女の子。ノイズをもたず心が読めないその存在にとまどい苛立つトッド。女はすべてスパクルが撒いた病気で死んでしまったはず。彼女はいったい何者なのか?

 理由も知らされずいきなり追い出され、町じゅうの男たちから追われる身となったトッドは、逃走の途中沼で出会った少女を連れてひたすら逃げる。自分たちがなぜ追われるのかもわからぬままに……。

 そしてトッドたちの前には想像もしなかった新たな世界が広がっていた。

 異様な迫力、胸が締めつけられるような感動、尽きせぬ謎。ビッグタイトルを独占した〈混沌(カオス)の叫び〉三部作の第一弾。ガーディアン賞、ジェームズ・ティプトリー・ジュニア賞、ブックトラスト・ティーンエイジ賞受賞。

(2012年5月8日/2013年9月5日)




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