今月末刊の『裏返しの男』は、フランス・ミステリ界の女王フレッド・ヴァルガスのアダムスベルグ・シリーズの第2弾です。『青チョークの男』のシリーズです。
『死者を起こせ』『論理は右手に』は三人の若い歴史学者たちの三聖人シリーズで、 この続刊も夏前にはお届けできる予定です。
 で、ヴァルガスがなぜすごいか……?
 CWA のインターナショナル・ダガー(The Duncan Lawrie International Dagger)が創設されたのは2006年。その第1回の受賞者がヴァルガスでした。作品は『死者を起こせ』。創元推理文庫版の刊行は、英訳されるより早く、2002年でした。
 そして2009年には、『青チョークの男』で再び受賞。これは、創元推理文庫では2006年刊でした。さらに、実は"Sous les vents de Neptune"という作品でも受賞しているのです。
 つまり、6回のうち3回、彼女が受賞しているという信じがたい快挙なのです。
 欧米では、アダムスベルグ警視をフランスのウェクスフォードと呼ぶ人もいます。そのたとえがどうなのかの判断は皆様にお任せしますが、たしかにすごい話だとお思いになりませんか?

 本作はアルプス山麓の村で起きた謎の狼事件。巨大狼が次々に羊を襲い、そのうちに巨大な歯形の残る人の死体も発見され……という怪事件が扱われるのですが、ニュースで事件を知った彼が、その画面に映った元恋人のカミーユの姿に気づき、現地に飛ぶのです。殺された村人はカミーユの知り合いの女農場主でした。彼女は、村のある男を狼男ではないか、と言い立てていました。そして村人たちも疑心暗鬼に。巨大狼なのか? それとも本当に狼男の出現なのか?

 本作はシリーズ第2弾ではありますが、事件は各作品、独立したものなので、ここから読み始めてくださっても、まったく問題はありません。
 どうぞこの世界のミステリファンをうならせている作家ヴァルガスの初体験を本作で! そして、他の作品にも是非触手をおのばしください! 後悔はさせません。長いあいだお待ちいただいてしまったファンの皆様にはお詫び申し上げます。ちなみに、巻末には若竹七海さんがエッセーをお寄せくださいました。こちらもお楽しみください。

(2012年1月6日)

 

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