奇妙な“謎”と音楽の魅力が味わえる、ドイツ読書界を席巻した傑作『この世の涯てまで、よろしく』をお贈りします!

 ○あらすじ○

 ピアニスト、アルトゥアはカフェでコーヒーを飲んでいた。おかしい、自分は確かに死んだはずなのに……。どうやら死んでから50年後の世界に蘇ってしまったらしい。
 そしてひょんなことから音楽大学の学生ベックと知り合い、幽霊以上に浮世離れしている学生たちとの共同生活が始まった。常に古風な舞踏会ドレスを着ている少女や、ブルガリア人の双子の霊媒と過ごす新しい人生には、なぜおかしな出来事ばかり起こるのか。寝ている間に幽体離脱ができるようになったり、不気味な“怪人”が現れたり、おまけに殺人事件まで発生するとは!

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 本書の主人公、青年ピアニストのアルトゥアは1949年にベルリンで死んだのに、なぜか50年後のドイツ、ハノーファーという街で蘇ってしまいました。そして“変人”ばかりの音大生たちと知り合い、彼らとともに幽霊騒動と殺人事件をめぐって駆けまわります。奇抜な設定と学生たちのユーモアあふれる会話が楽しめる、不思議な魅力に満ちた物語です。

 著者のフレドゥン・キアンプールさんは、なんと現役のピアニスト。ベルリン・フィルハーモニーのホールやハノーファー万国博覧会などで演奏しています。この作品に出てくるおかしな学生たちのエピソードは、著者の学生時代に本当にあったことらしく、「こんな音大生もいそうだなぁ」というリアリティのある描写になっています。

 本国ドイツでは、読書家たちの間で高評価を得ており、ある書店では「友人にプレゼントしたいから」という理由で本書を2ダースも注文したお客さんがいました。その書店の店主は「この本には何かある!」と思い自分でも読み、すっかり気に入ってしまい、著者サイン会と朗読イベントを企画しました。そして自分が見込んだ人物にサイン本をプレゼントしているそうです。

 また、ドイツでは作品に出てくる楽曲の数々を収録した2枚組のCDも発売され、大評判になっています! ピアニストと音大生たちの物語ですから、作品中ではたくさんの曲が演奏されます。バッハ〈ゴルトベルク変奏曲〉、リスト〈巡礼の年〉、シューマン〈アベッグ変奏曲〉、ストラヴィンスキー〈ペトルーシュカ〉……。巻末には作品に登場する主な楽曲のリストをつけましたので、ぜひバラエティ豊かな音楽を聴きながら読んでいただけると嬉しいです。クラシックファンはもちろん、『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子)や『シューマンの指』(奥泉光)でクラシックに興味を持ったという方にも楽しんでいただけると思います。

 最後に、海外の雑誌や広告媒体を中心に活躍する気鋭のイラストレーター、魚住幸平さんによるカバーにもご注目ください! まるで音楽が聞こえてくるような、表紙から裏表紙までぐるっとひとつながりになっている豪華な絵です。帯に隠れている“秘密のイラスト”もあり、遊び心いっぱいのすてきな作品を描いていただきました。ぜひお手にとって、帯やカバーを外してみてください!

 『この世の涯てまで、よろしく』は5月11日刊行予定です。どうぞお楽しみください。

(2011年5月6日)

 

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