2014年11月28日~2015年1月20日に本ウェブマガジン上で実施しました、高山羽根子『うどん キツネつきの』(創元日本SF叢書)収録作品の人気投票の結果を発表します。なお、投票をいただいた方のなかから抽選で1名様に高山羽根子先生より、手作りの粗品を進呈いたします。
(ところで、各収録作にはそれぞれ英語題を付してありますが、表題作「うどん キツネつきの」の英語題"Unknown Dog Of Nobody"の頭文字をつなげると"UDON"になることは皆様お気づきでしたか?)

*第1位「巨きなものの還る場所」

以下に、頂戴いたしましたコメントをご紹介いたします。なお、「巨きなものの還る場所」はWeb上でも無料公開しております

■「巨きなものの還る場所」

・並列するそれぞれの舞台に、どんでん返しのような繋がりがないのが好きです。おのおのの時間とそこに生きる人たちは孤独で、寄り添っていくしかないという表現が、優しいです。(30代・女性)

・青森を舞台に、命の宿ったねぶたと学天則の邂逅、オシラサマ、異国の地…と、時間も場所も、人の世界も人ならずのものの世界も超越した物語の世界観に、酩酊感すら味わいました。うまく感想を伝えられなくてもどかしいけど、それがまたこの短編の魅力なのかな、と思います。読んだ人にだけわかるよね…と、共犯者の笑みを浮かべています。(30代・女性)

・高山さんの作品はどれも柔らかな文章のなかに、どこか不思議で奇妙でよい意味で「ひっかかる」ものがあるのですが、本作はそれらをすべて含んだ上でなおかつ圧倒的な力強さが感じられます。(50代・女性)

・収録作の中でスケールが最も大きいのに、一番繊細な描写である印象を受けたから。時間と空間を超えて重なり合うイメージが美しかった。(10代・男性)

・高山さまの引き出しの多さと懐の深さを感じさせる傑作だと思います。ひょっとしたら、この作品の不条理感が高山さまの本質に近いのかもしれませんね。(60代・男性)

・どれも好きですが、さらに大きな作品が世に出ることへの願いをこめて、一番の大作である「巨きなものの還る場所」に投票します。モチーフの組み合わせが個人的にいちばんたまらない作品でもあります。(40代・男性)


■「うどん キツネつきの」

・「うどん キツネつきの」は、「盤上の夜」と共に「創元SF短編賞」のジャンル性を超えた豊穣なイメージの形成を大きく担った作品だと思う。初読の衝撃は、改めて読んでも褪せていない。(40代・男性)

・全部好きだけれども、生きもののエピソードがとてもよいので。老犬の介護の話とかさらっとしか出てこないのに生々しかったです。(40代・女性)

・他にも惹かれる作品もあったのですが、やはり最初に読んだときの印象がいちばん強かったので。純然たるSFともファンタジーともいえない、しかし普通の小説ともいえない作品だと思います。(60代・男性)

・笑うゴリラから一気に持っていかれる高山ワールドの、ゆったりとした不思議な分筆空間に魅了されました。(40代・男性)


■「おやすみラジオ」

・他の作品に比べ、軽快な感じはないが、こどもの文章から滲み出る不気味さや、SFの壮大さを一番感じた。(40代・男性)

・唐突に出て来るラジオちゃんが最高。(50代・男性)

・一番ざわざわしたかも知れない。(50代・男性)

・「ピッカピカや」と楽しげにしゃべる篠田のおっちゃんも捨て難いし、「ああもう。逃げたって干からびて死ぬだけなのに。バカだねえ」とと独り言を言う和江もいいし、「母さんらしいじゃない」と笑顔で言う瞳ネェも好きだし、「や、動き出すからだ」と言う那美さんはかっこいいけれど、「たくさんの精神を呑みこんで押し流すことが無くなる時が来るなら」という言葉のあとのふたりのかみ合わない会話が好きなので、「おやすみラジオ」を選びました。(20代・女性)

・高山さんの作品は、どれも地に足が着いている。問題はその地面が、我々とはどこか違うフェイズにある世界にあることだ。その大地の上では色々と、奇妙にかつ面白く、物事がねじ曲がる。不思議さは不思議さのまま、解かれようが解かれまいが、魅力を失わない。
さんざ悩んだ末、「おやすみラジオ」を選ぶことにしたのは、高山大地(仮称)のあの音が、はっきり聞こえてくる作品だからだ。その大地は決して異界ではない。この世界と地続きのどこかにある。というよりも、異なる位相で我々の住む世界に重なっている。そしてそこでは、不思議さはいつまでも魅力を失わず、なによりとてもいい匂いがするのだ。(40代・男性)


■「シキ零レイ零 ミドリ荘」

・個性的なキャラクターが織りなすゆるい日常が楽しい。空白の多い柔らかな線でマンガ化などされても似合うと思う。(40代・男性)

・「おやすみラジオ」もとても好きで迷ったのですが、まだまだ一波乱二波乱ある続編が書けそうなミドリ荘に一票!!(30代・女性)

・アヤシクて、ニギヤカで、少しフシギで、ちょっと切なくて、なんとも愛おしいへんてこさ。是非とも映像化して、エノキ氏の―――(゜∀゜)――――!!!!!を聞いてみたいぞ。(40代・男性)

・それぞれどれもよかったのですが、言葉好きとしては現代日本語見本市のような「シキ零レイ零 ミドリ荘」を推します。絵文字で話す人が出てくる小説は初めて読みました。ともかく笑えるし。(50代・女性)

・こんなにも軽やかで異様な「言語SF」は、初めて読んだ気がします。様々なメディアによって様々な形の「SF」が表出する現在に於いて尚、言語のみを用いて表現される「SF小説」が書かれ続け、読まれ続ける意義をあらためて実感します(大げさででしょうか?そんなことはないでしょう!)。また、個人的に「理解とコミュニケーション」について常に関心があるのでテーマ自体ツボでした。さらにさらに「レミド(上)ド(下)ソ」ときたら、それは…もうコレしかない!(40代・男性)

・高山羽根子の小説には生命力の強そうな人たちが多く登場するが、物語世界の背後に控える闇や、ゆるくない事情と戦うためなのだろうと推測している。本編は、タイトル通りのアパートの、個性的で逞しい住人たちの暮らしぶりや会話が可笑しい。篠田さん以外の登場人物は、明らかな嘘やホラは避けているので、篠田さんのホラ話っぽい言葉にも真実が埋まっているのではないかとか、いろいろ考えられて楽しかった。篠田さんが、娘の嫌いな抹茶のアイスクリームを差し入れて怒られるところで、『宇宙戦争』のトム・クルーズが、別居している娘のピーナッツアレルギーを知らなくて、「いつからだ!」と驚くところを思い出した。(たしか娘はあっさりと「うまれつき」と答えたはず)キイ坊母子には、なにか大きな(世界規模の)秘密がありそう。(女性)


■「母のいる島」

・姉妹の掛け合いが生き生きと描かれていて、話のテンポも良い。(30代・男性)

・女の子がとても強いのはいいなぁ、と。(40代・女性)

・正月に初めて婚約者の実家に伺い、義理の親戚に対面しました。親兄弟の力は偉大だなぁと思った直後に読んだので、なんだか色々と感じ入りました。(20代・男性)

・かわいくてかっこいい。あっけらかんとした雰囲気と執念の取り合わせがおもしろかったです。おやすみラジオと迷いました。(30代・女性)

・掴み所がないけど面白い作品群の中、この作品からはなんとなく紐解けそうな気配がした。あと疾走感も好き。(20代・男性)




(2015年2月5日)


 

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