青崎有吾 yugo AOSAKI



『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』は、『体育館の殺人』『水族館の殺人』に続くシリーズの三作目です。

 初の短編集ということで、夏休みを中心とした高校生たちの日常のお話をまとめました。館も出ないし殺人も起きないので今回ばかりは誰恥じることのないちゃんとした真面目なタイトルをつけようと意気込んでいたのですが、結局また正気を疑われるような題名になってしまいました。申し訳ありません。僕はもう駄目かも知れません。

 ちなみに他のタイトル案は、某先輩にアイデアを出していただいた『裏染天馬の道楽』というのがあったのですが、うーん……どちらにせよ結果は同じだったという気もします。


 何はともあれ、せっかくですから収録作について簡単に振り返っていこうと思います。

「もう一色選べる丼」
『体育館の殺人』と『水族館の殺人』の間に入るお話です。ミステリーズ!掲載の際「学園ミステリ特集をするから学園ミステリを書け」と言われ、学園の中で今まであまりミステリの題材に使われていない場所はどこだろう、と考えて学食を舞台にしました。ちなみにモデルはほぼそのまま母校の学食です。

「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」
『水族館の殺人』のあとの夏祭りのお話です。元ネタはもちろんかの有名な『競作 五十円玉二十枚の謎』。とはいえもちろん五十円玉二十枚を千円札と両替する怪人物が出てきたりはせず、謎自体はちょっと毛色が違ったものになっています。

「針宮理恵子のサードインパクト」
『体育館の殺人』に登場した針宮さんという女の子のお話です。なぜ彼女を主役にしたかというと、そうでもしないと扱いにくくてしょうがないと思ったからなど理由はいろいろあるのですが長くなるのでやめましょう。

「天使たちの残暑見舞い」
 説明が難しいです。とにかく天使が出てきます。いえ文化祭は関係ありません。ところで今の高校生ってポッキーゲームのことを知っているのでしょうか。あれはいったい何が起源なのでしょう。『わんわん物語』?

「その花瓶にご注意を」
 裏染天馬の妹・裏染鏡華のお話です。風ヶ丘高校ではなく、彼女の通う緋天学園という私立校の中等部が舞台となっております。両校の雰囲気の違いを何となく感じ取っていただければ幸いです。

 ちなみに今回、イラストレーターの田中寛崇さんに各話の扉絵を描いていただきました。表紙だけでなく本の中でも素敵なイラストが楽しめます。お得です。そちらもどうぞお楽しみに。

(2014年5月)

青崎有吾(あおさき・ゆうご)
1991年神奈川県生まれ。明治大学卒。2012年、『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞してデビュー。シリーズ第2作の『水族館の殺人』は、第14回本格ミステリ大賞の候補となるなど、今後が期待される若手ミステリ作家。


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