ここだけのあとがき
2009.11.05
滝田務雄『田舎の刑事の闘病記』[2009年11月]
暖かく見守ってくださいませ。
田舎の刑事たちの奮闘を描く、脱力ミステリ第2弾
(09年11月刊『田舎の刑事の闘病記』)
滝田務雄 michio TAKITA
さあ、田舎の刑事たちの活躍の第二弾が世に出てしまいました。御用とお急ぎでないかたは、どうぞ立ち止まってこの色物をお手に取ってください。御用とお急ぎのかたもついでに立ち止まってお買い上げいただけるのならありがたいです。
平和な田舎の町に次々と起こる怪事件。町を守るために、黒川鈴木巡査部長をはじめとする登場人物が八面六臂の、いや、どちらかと言えば七転八倒しつつも七転び八起きといった奮戦をしております。
さて、王道の主人公というものは、話が進むほどに成長して強くなるもののはずなんですが、うちの黒川さんには、新しい話を書くたびになぜか弱くなってゆくという、あのハトヤで有名だった「三段逆スライド方式」が導入されております。私としてはそんなややこしいシステムを黒川さんのキャラ作りに導入した記憶は無いのですが、いつの間にか導入されていたのですから仕方ありません。
まあ、弱くなるだけなら別に構わないのですが、人が死なない推理小説を書こうとしてはじめたこの創作も、いつの間にか人の生死にかかわるような凶悪で残忍な事件が起こるようになっています。しかも今回の黒川さんは、黒川さんのくせに夫婦で海外旅行までしているのです。よせばいいのに黒川さんは行動範囲まで広げているのです。
黒川さんを補うように黒川さん以外の登場人物たちは、着実にパワーアップしているのですが、なんのことはない、そのせいで黒川さんが相対的にますます弱くなっているだけというわけでして。当初の黒川さんは少なくとも部下の白石くんよりは、まだ強かったはずなんですけどね。それでも普通なら周囲の人が強くなっているんですから、みんなでフォローできて黒川さんが弱くなっても、なんの問題もないのですが、この人が探偵役なんですよねえ。困ったことに最後にはこの人が事件を解決しなければならないんです。
黒川さんだって不安でしょうけど、書いているほうはもっと不安です。しかし「ああ、大丈夫なのかなあ、この人が主役で」などと悩んでいる私を尻目に、黒川鈴木は色物なりに奮起して、毎度事件を解決しております。いや、なかなかどうしてたいしたもんです。
というわけで、推理小説をこよなく愛する紳士淑女の皆様、神のごとき寛大な愛で、前作から一段とパワーダウンした黒川さんを暖かく見守ってくださいませ。作者が喜びます。
■ 滝田務雄(たきた・みちお)
1973年福島県生まれ。日本大学芸術学部卒。2006年、短編「田舎の刑事の趣味とお仕事」で第3回ミステリーズ!新人賞を受賞してデビューする。得難いコメディ・センスの持ち主で、現在は〈田舎の刑事〉シリーズの初長編を執筆する傍ら、新シリーズの準備にも乗り出している。
推理小説の専門出版社|東京創元社
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