ここだけのあとがき

2008.06.05

大崎梢『平台がおまちかね』[2008年6月]

ここをお読みの皆さまと、
どちらかの平台で巡り会えますように。

出版社の営業マン・井辻くん日々の奮闘を描く、
ハートフルなミステリ連作短編集
(08年6月刊『平台がおまちかね』)

大崎 梢 kozue OHSAKI

 

 書店に勤めていた頃、書店を舞台にしたミステリを書きたいと思い、何作か書きためました。それが〈成風堂〉シリーズとなって日の目を見たのですが、もうひとつ、温めていた題材がありました。出版社の営業さんが主人公の話です。
 書店員はたいてい終日、店のフロア内で仕事をします。休み時間以外、朝から晩まで同じ書棚の間でうろうろ。入荷してくる本の世話をして、お客さんに対応して、馴染みきった配置の中を行ったり来たりして毎日が過ぎていきます。
 けれど営業さんはちがう。店から店へ、ミツバチのごとく渡り歩くのがお仕事。
 どんな思いでやってくるんでしょう。如才ない笑顔で現れ、担当者を辛抱強く待ち、自社本をアピールし、注文書にハンコをもらって、さっそうと引きあげて行くけれど。
 次はどこに行くの? もうお昼ご飯は食べた? 他の営業さんと何を話していたの? 今の仕事に満足してる? さいしょから営業職を希望していた? 書店まわり以外にやっていることってあるの? 何が嬉しい? 口惜しい? つらいこともあるでしょ? 本は好きですか?
 さまざまな思いがよぎり、興味は尽きませんでした。
 そしてデビューしてから、取材という名の下に、各社の営業さんたちとお話しする機会をつくってもらい、すごく楽しかったです。書店員さんにもいろいろうかがいました。もちろん、面白い営業さんの話!
 ご協力いただいた皆さま、ほんとうにありがとうございました。おかげさまで五本の短編が書けました。
 隔月刊誌〈ミステリーズ!〉に掲載された4本に、書き下ろしを1本プラス。さらに主人公、「井辻くんの一日」というのもつきます。
 タイトルは、営業マンにとっての夢の言葉──と同時に、筆者にとっても憧れのフレーズ、『平台がおまちかね』にしてもらいました。
 ここをお読みの皆さまと、どちらかの平台で巡り会えますように。切に祈っています。
 どうぞよろしくお願いいたします。

(2008年6月)

大崎梢(おおさき・こずえ)
東京都生まれ。神奈川県在住。2006年5月、連作短編集『配達あかずきん』でデビュー。元書店員ならではの目線と、優しい語り口、爽やかな読後感で注目を浴びる期待の新鋭。著作に、『配達あかずきん』『晩夏に捧ぐ』『サイン会はいかが?』の〈成風堂書店シリーズ〉、『片耳うさぎ』、『天才探偵Sen~公園七不思議』がある。最新刊『平台がおまちかね』は、出版社の営業マンを主人公に、本にまつわるあれこれをハートフルに描いた期待の新シリーズ第1弾。

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