『密室から黒猫を取り出す方法』のあとがき
『踊るジョーカー』につづくシリーズ第2弾
名探偵、おそるおそる五つの謎に挑む
(09年9月刊『密室から黒猫を取り出す方法 名探偵音野順の事件簿』)

北山猛邦 takekuni KITAYAMA

 

 前作の『踊るジョーカー』に続いて、シリーズ二冊目となりました。名探偵の音野順も少しは成長したでしょうか。僕は前作からほとんど成長できずにやっぱり編集部とイラストレーターの片山若子さんにご迷惑おかけし通しでした。先に謝罪と感謝を述べておきたいと思います。すみませんでした。ありがとうございました。
 今回、一連の物語でこだわった点は、『殺人事件であること』です。
 明るく楽しいミステリを目指した場合、本当は死体なんか出てこない方がいいに決まっているんです。殺人やら凶器やら、物騒な単語は出てこない方が、読者も穏やかにやさしい気持ちで読めるはずなんです。
 でもだめです。あえて名探偵とその助手には、殺人事件の謎を解いてもらうことにしました。そうすることで、軽さと重さのバランスをとりました。できることなら家で寝ていたい音野順は、人命がかかっているからこそ、なけなしの使命感に背中を押されて行動しているわけです。
 今回も〈ミステリーズ!〉で連載させていただいた短編四つに、書き下ろしの短編を一つ足した構成になっています。
 引き続き連載しているシリーズ短編ですが、2009年8月の〈ミステリーズ!〉でいったんお休みです。その掲載分を含め、いずれ三冊目も出ると思われます。
 これからも気弱な名探偵を応援してください。

(2009年9月)

北山猛邦(きたやま・たけくに)
1979年生まれ。2002年、『「クロック城」殺人事件』で第24回メフィスト賞を受賞してデビューする。機械的トリックの案出に強いこだわりを持つ一方、世紀末的かつ叙情的な独自の作品世界を構築し、若手本格ミステリ作家として将来を嘱望されている。ほかの著作に『少年検閲官』『踊るジョーカー』『「瑠璃城」殺人事件』『「アリス・ミラー城」殺人事件』『「ギロチン城」殺人事件』『アルファベット荘事件』がある。


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