ここだけのあとがき
2010.05.07
加藤実秋『Dカラーバケーション インディゴの夜』[2010年5月]
ますます冴えと、キレを見せる〈インディゴの夜シリーズ〉第四弾。
(10年4月刊『Dカラーバケーション インディゴの夜』)
加藤実秋 miaki KATO
「インディゴの夜」シリーズ、高校野球風に言うなら「2年ぶり四度(作)目」の新作です。
連作スタイルを続けていると、書きながら「次はこの人にスポットを当てよう」「こんなモチーフの話も書きたい」と次作への宿題のようなものが生まれます。今作も同様で、『ホワイトクロウ』執筆中にアイデアが浮かび、担当編集者にも相談し、「いま〈ミステリーズ!〉で連載している『こちら万来軒(×)探偵事務所』が終わったら、続けて取りかかりましょう」と話していた矢先に『インディゴの夜』のテレビドラマ・舞台化が決定し、急遽! 大突貫! で書き下ろしをすることになりました。……いや~、キツかったっす。各社の担当編集者に頭を下げて昨年下半期に着手予定だった仕事を延期、『こちら万来軒(×)~』も休載し、必死で、大晦日も元旦も休みなしで書き続けました。結果、白髪が増え、いや~な感じに痩せ、おまけに人間ドックに入ったら「肺に結核の治癒痕がある」とか言われる始末。
しみったれた話はこれぐらいにして、以下、各エピソードについての解説です。
●「7days活劇」
三十年来の筋金入りオカルトマニアにつき、インディゴで怪談・都市伝説絡みの話を書くのは念願でした。風営法が改正され、店の営業形態をどうするかも思案どころでしたが、ニューフェイスを登場させることで上手く移行できたか? という感じです。
執筆時、舞台となる公園を取材しましたが、近隣一帯の様変わりぶりにびっくり。「TRANS CONTINENTS」はどこ? 「CHIPIE」のブティックってなくなっちゃったの? としばし呆然。
●「サクラサンライズ」
「インディゴで『○○○の○○』をやりたい!」もこれまた数年来の念願でした。作中に登場する1970~80年代の歌謡曲は、昭和40年代生まれの同輩諸氏には「おお!」と思っていただけるかと。
クライマックスシーンの舞台となる麻布近辺は、ドラマ版・インディゴのプロデューサーに会食でお連れいただき、初めて足を踏み入れました。街並みもお店のつくりもオサレワールド全開、感化されてすぐ書いちゃうのが田舎者の哀しい性(さが)です。
●「一剋」
冒頭にも書きましたが、インディゴシリーズでは「各レギュラーキャラクターに一度はスポットを当てる」をマイルールにしています。そこで満を持して登場したのが豆柴こと柴田克一刑事。読者には全然人気ない、というより印象の薄いキャラですが、作者的には結構お気に入りです。生みの親である脚本家・高山直也さんのご了承を得て、ドラマオリジナルキャラの某人物も登場させています。
●「Dカラーバケーション」
豆柴刑事とは反対に、読者人気ダントツナンバーワンなのがclub indigoマネージャー・憂夜。自分で考えておいてなんですが、シリーズが進めば進むほど「ミステリアス」の迷宮にはまっていくキャラです。生い立ちから、indigoに辿り着くまでのディープでデンジャラスでオリエンタルな(一部誇張)経歴は私の中ではがっちりできあがっていて、いずれ大公開! そして驚愕の結末!!(多分)を迎えますが、とりあえずさわりだけでも、と書きました。
ドラマファンで、憂夜=加藤和樹さんのイメージで読まれた方は戸惑われる部分もあるかと思いますが、著者の憂夜のイメージモデルはまったく別の某アジア系スターだったりします。そのあたり想像を膨らませると、小説は小説で楽しんでいただけるのではないでしょうか。
前述のマイルールに従い、この作品を書いたことで、また次作に向けての宿題ができました。レギュラーキャラの中で唯一ピックアップされてない、オールインワンマニアのあの人とか、「劇団おとしあな」の公演告知ポスターにちらっと出てきたイベントとか、板前顔の彼とか。加えて、「インディゴで長編を読みたい」というご意見もいただいていて、創作意欲を刺激されます。できるだけ早く、より面白いものをお届けできるよう、精一杯がんばりますので今後もclub indigoの面々にお付き合いいただければ幸いです。
■ 加藤実秋(かとう・みあき)
1966年東京都生まれ。2003年、「インディゴの夜」で第10回創元推理短編賞を受賞しデビュー。スタイリッシュな描写と、エンターテインメント性を打ち出した作風で注目される。著作は『インディゴの夜』『インディゴの夜 チョコレートビースト』『モップガール』『インディゴの夜 ホワイトクロウ』『ヨコハマB-side』『チャンネルファンタズモ』がある。〈インディゴの夜〉シリーズはドラマ化されて好評を博した。本書は〈インディゴの夜〉シリーズ待望の第4弾である。
本格ミステリの専門出版社|東京創元社
- バックナンバー
- 秋梨惟喬『憧れの少年探偵団』[2011年11月]
- 『ガラスのターゲット』刊行記念特別掌編 安萬純一「日常の謎殺人事件」[2011年7月]
- フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一訳『犯罪』 ここだけの訳者あとがき【後編】(1/2)[2011年7月]
- 山口芳宏『蒼志馬博士の不可思議な犯罪』[2011年6月]
- フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一訳『犯罪』 ここだけの訳者あとがき【前編】(1/2)[2011年6月]
- 高橋良平+東京創元社編集部編『東京創元社 文庫解説総目録』 総目録補完計画
- 伯方雪日『死闘館 我が血を嗣ぐもの』[2010年6月]
- 倉阪鬼一郎『薔薇の家、晩夏の夢』[2010年6月]
- スペンサー・クイン/古草秀子訳『ぼくの名はチェット』[2010年5月]
- 加藤実秋『Dカラーバケーション インディゴの夜』[2010年5月]
- 山口芳宏『100人館の殺人』[2010年4月]
- 梓崎優『叫びと祈り』[2010年3月]
- 深水黎一郎『五声のリチェルカーレ』[2010年2月]
- 保科昌彦『ウィズ・ユー』[2009年12月]
- 滝田務雄『田舎の刑事の闘病記』[2009年11月]
- 相沢沙呼『午前零時のサンドリヨン』[2009年10月]
- 北山猛邦『密室から黒猫を取り出す方法』[2009年9月]
- 南園律『最上階ペンタグラム』[2009年2月]
- 千街晶之ほか『本格ミステリ・フラッシュバック』[2008年12月]
- 北山猛邦『踊るジョーカー』[2008年12月]
- 加藤実秋『インディゴの夜 ホワイトクロウ』[2008年12月]
- 山口芳宏『豪華客船エリス号の大冒険』[2008年11月]
- 七河迦南『七つの海を照らす星』[2008年10月]
- 麻見和史『真夜中のタランテラ』[2008年9月]
- 高井忍『漂流巌流島』[2008年7月]
- 吉永南央『誘(いざな)う森』[2008年7月]
- 竹内真『シチュエーションパズルの攻防』[2008年6月]
- 近藤史恵『ヴァン・ショーをあなたに』[2008年6月]
- 大崎梢『平台がおまちかね』[2008年6月]
- 早瀬乱『サトシ・マイナス』[2008年4月]
- 小林泰三『モザイク事件帳』[2008年3月]
- 太田忠司『奇談蒐集家』[2008年2月]
- 津原泰水『ルピナス探偵団の憂愁』[2008年1月]
- 石持浅海『温かな手』[2007年12月]
- 中野順一『ロンド・カプリチオーソ』[2007年12月]
- 小路幸也『HEARTBLUE(ハートブルー)』[2007年12月]
- 岸田るり子『ランボー・クラブ』[2007年12月]
- 門井慶喜『人形の部屋』[2007年12月]
- 海堂尊『夢見る黄金地球儀』[2007年12月]
- 近藤史恵『タルト・タタンの夢』[2007年10月]
- 滝田務雄『田舎の刑事の趣味とお仕事』[2007年9月]
- 秋梨惟喬『もろこし銀侠伝』[2007年8月]
- 石崎幸二『首鳴き鬼の島』[2007年7月]
- 久綱さざれ『神話の島』[2007年7月]
- 福田栄一『エンド・クレジットに最適な夏』[2007年6月]
- 篠田真由美『風信子(ヒアシンス)の家 神代教授の日常と謎』[2007年4月]
- 大崎梢『サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ』[2007年4月]
- 倉阪鬼一郎『騙し絵の館』[2007年3月]
- 藤野恵美『ハルさん』[2007年3月]
- 北山猛邦『少年検閲官』[2007年1月]
- 北國浩二『夏の魔法』[2006年12月]
- 道尾秀介『シャドウ』[2006年10月]
- 大崎梢『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』[2006年10月]
- 山之内正文『八月の熱い雨 便利屋〈ダブルフォロー〉奮闘記』[2006年9月]
- 日向旦『世紀末大(グラン)バザール 六月の雪』[2006年6月]
- 大崎梢『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』[2006年5月]
- 加藤実秋『インディゴの夜 チョコレートビースト』[2006年4月]
- 岸田るり子『出口のない部屋』[2006年4月]