ここだけのあとがき

2013.08.05

青崎有吾『水族館の殺人』ここだけのあとがき[2013年8月]

青崎有吾 yugo AOSAKI


 この前がジメジメした梅雨どきの話だったので、今度は爽やかな夏の話にしたい。いやどうせ死体が転がるのだから爽やかもクソもないけれど、とにかく季節を夏にしたい。夏といったらプールに海だ、海といったら水族館だ、『水族館の殺人』だ。
 というわけで、また「冗談でしょ?」と耳を疑われるようなタイトルのお話を書いてしまいました。本当に申し訳ございません。

 一応シリーズ化ということで、一作目の『体育館の殺人』からの続編となっております。前作に引き続き、日本一需要のない少年探偵などが出てきます。『体育館』の中には、書かないまま終わってしまった部分や拾わずに捨て置いてしまった部分がいくつかあったため、続編を上梓できたのはとても嬉しいです。その反面、不安でもありますが……。

 不慣れなものですから、当然のことながら原稿を書くのは大変でした。テスト期間中にひーんと泣きながらキーボードを叩き、困ってしまったときは実際に近場の水族館へ行って、ついでに冬の湘南の、人の少ない砂浜を延々四時間くらい散歩しつつ、どうしたもんかと続きを考えたりしました。髪とコートと眼鏡のレンズが砂まみれになりました。二度と歩くものかと思いました。
 結局のところ、やりたかったことというのは前回と同じです。フェアプレイで推理して犯人を当てるという、要するにごくごく旧式の、古き良き本格ミステリですね。ガジェットにトリック、意外な真相にどんでん返しとミステリの魅力は数ありますが、中でも僕が好きなのは、「どうしてそれがわかったか」という謎解きそのものの魅力でして、そういった面白さを自分のお話にも入れたくて、じゃあ舞台が水族館になった場合、どういう事件がふさわしいんだろうか、どういう手がかりから推理していくんだろうかと、そんなことを考えながら書きました。
 などと大仰なことを言っていると、何だかとっつきにくい代物のように思えてきますが、実際はそれほど大したものじゃありませんのでご安心ください。何せ出てくるのが呑気な高校生たちですから、本筋の脇で卓球をしたり水着になったりプリキュアを観たりと好き勝手やっているようです。どちらもひっくるめてお楽しみいただければ幸いです。


(2013年8月)

青崎有吾(あおさき・ゆうご)
1991年神奈川県生まれ。明治大学在学中。明治大学ミステリ研究会所属。2012年、『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞してデビュー。



ファンタジーの専門出版社|東京創元社
バックナンバー