ここだけのあとがき

2013.12.05

相沢沙呼『卯月の雪のレター・レター』ここだけのあとがき[2013年12月]

相沢沙呼 sako AIZAWAI



 この短編集は、主に相沢沙呼が十代の頃に書いた小説のプロットを元に、リライトを施したもので構成されています。小説を書くのが楽しいという、ひたすらに純粋な気持ちで書き上げた物語の数々は、もっとも自分らしい色が出ている小説であると言えるかもしれません。

 このあとがきでは、当時のことを振り返りながら、簡単に各話についてお話をしたいと思います。

「小生意気リゲット」

 高校卒業時に書いた作品で、初めて大人の人に読んでもらうことを意識した小説です。二十代の女性を主人公にする、というのも、恐らく初めての試みでした。この作品を書いて、自分の作風が広がったような気がします。

 このお話に関しては、ほとんどリライトを施さないで、余分な箇所を削るなど、細かい修正だけをしています。


「こそどろストレイ」

 回転式小袖シリーズ(後述)のスピンオフである、島崎水葉シリーズ第二話より。

 このシリーズでは、『日常の謎』でありながら、小袖シリーズで扱うにはやや固い感じの、密室ものを扱っていました。高校生の頃に書いたものですが、もともとは三人称の小説で、文体は大幅に変えてあります。汚い文章だったので、直すのに苦労しました。

 ややキャラクター小説よりで、当時の水葉は更にもっとクールな子でした。


「チョコレートに、躍る指」

 書いたのは大学生の終わり頃。小説としても、ミステリとしても、いちばん気に入っている作品です。

 もっとも、この作品は短編集の中でいちばん、リライトで大幅に変わっていまして、そもそもの作品では視点人物が違っていました。文体も、より切ない作風を出すためにいろいろと実験してあります。チョコレートや人魚姫といったモチーフも、リライト時に付け加えたもの。『いま』の自分らしい作品かもしれません。


「狼少女の帰還」

 唯一、構想から執筆まで、デビュー後に書いたもの。新しい作品です。

『どじっこ先生の事件簿』シリーズというのをやりたくて、そのパイロット版のようなものでした。小学校のお話は、まだまだいろいろと書いてみたいと思っております。

 珍しく、書き上げたあとでタイトルを決めました。


「卯月の雪のレター・レター」

 高校生の女の子の青春を、日常の謎と共に柔らかく綴る、回転式小袖シリーズの第三話……。なんでそんなシリーズ名にしたのかは覚えていません……。謎です。

 高校生の頃に、はじめて『日常の謎』のジャンルに挑んだ思い出深いシリーズです。当時は、北村薫先生の影響を強く受けているため、雰囲気や文体にそれが色濃く出ているような気がします。そこを単なる猿真似とするか、味とするか、書き直すのにとても苦戦しました。なんとか自分らしさを出しつつ、昔の自分でしか描けなかったものを残そうと、リライトの調整を繰り返しました。
 あえて、シリーズものの一編、という色を残してあります。

 毎回、主人公の小袖がお友達と遊んでいるときに、『日常の謎』と出くわす、という流れなのですが、このお話ではお友達が登場しません。「こそどろストレイ」の島崎水葉は、小袖のお友達でクールなお姉さん系女子でした。

 タイトルを含めて、お話の流れなど、とても気に入っています。今の自分では作れないプロットかもしれません。


(2013年12月)

相沢沙呼(あいざわ・さこ)
1983年埼玉県生まれ。2009年、天才的なマジックの腕を持つ女子高校生・酉乃初(とりの・はつ)が活躍する『午前零時のサンドリヨン』で、第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。自らもマジックを愛好。著作は〈酉乃シリーズ〉の『ロートケプシェン、こっちにおいで』、〈マツリカシリーズ〉の『マツリカ・マジョルカ』『マツリカ・マハリタ』『ココロ・ファインダ』がある。


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