緻密な伏線と論理展開の妙、「亜愛一郎」「曾我佳城」「ヨギ ガンジー」といった愛すべきキャラクターなどで、読者を魅了した泡坂妻夫。
2023年は、そんな「ミステリ界の魔術師」と称された偉大なミステリ作家の生誕90周年にあたります。その節目の年を記念して、2月から創元推理文庫にて、隠れた名作を3作復刊してきました。第1弾は、どんでん返しを数多く収録した短編集『ダイヤル7をまわす時』。第2弾は、第16回泉鏡花文学賞受賞作『折鶴』。第3弾は、第103回直木賞受賞作『蔭桔梗』。
そしてこの度、連続復刊企画の好評を受けて、泡坂ミステリの長編第1弾『11枚のとらんぷ』を、新装版で刊行いたしました! あらすじは以下の通りです。
奇術ショウの仕掛けから出てくるはずの女性が姿を消し、マンションの自室で撲殺死体となって発見される。しかも死体の周囲には、奇術小説集「11枚のとらんぷ」で使われている小道具が、毀されて散乱していた。この本の著者鹿川は、自著を手掛かりにして真相を追うが……。奇術師としても高名な著者が華麗なる手捌きのトリックで観客=読者を魅了する、傑作ミステリ!
本作の特徴は、何といっても「奇術とミステリの融合」です。第一部で描かれる華やかな奇術ショウ。第二部の作中作として登場する、奇術小説集「11枚のとらんぷ」収録の11通りの創作奇術とその種明かし。そして、第三部の世界国際奇術家会議での賑やかな催し。
一見、殺人事件と関係のないように見えるシーンの中に、さりげない伏線が仕込まれ、ラストであっと驚く真相が明かされるのです!
この手捌きも鮮やかな謎解きは、正に奇術師でもあった泡坂妻夫にしか描けない唯一無二のもの。騙しを得意とした著者の、真骨頂が発揮されています!
本書の解説は、『午前零時のサンドリヨン』をはじめとする〈酉乃初〉シリーズで、奇術をモチーフとしたミステリを多くご執筆している相沢沙呼さん。同じく「奇術」と「ミステリ」を心から愛する作家としての考察は、目を見張るものがあります。
騙される快感を存分に味わえる本書は、絶賛発売中です。ぜひ、たっぷりと泡坂ワールドの魅力に浸ってください!