図書館の本、一万五千冊が消えた?
気弱な青年が本探しの過程で引き起こす大騒動
『白鯨』『ダ・ヴィンチ・コード』『薔薇の名前』『夜中に犬に起きた奇妙な事件』『7つの習慣』『鷲は舞い降りた』『ベン・ショットの英国博覧記』『普通のドイツ人とホロコースト』『ジャッカルの日』『色彩について』『パイの物語』『荒地』『ブラヴォー・ツー・ゼロ』『偉大なるギャッツビー』『ハリー・ポッターと謎のプリンス』……ずらずら並べたこれらはすべて、本書『移動図書館貸出記録1 蔵書まるごと消失事件』の作中に登場する実在の本(の一部)です。
登場人物たちが何かにつけては本について言及する本書は、本好きなら見のがせない作品です。そもそもメインとなる事件が図書館の蔵書探し! それも一冊や二冊ではなく、なんと約一万五千冊! 田舎町の小さな図書館まるまるひとつ分の本がどこかに消えてしまったというのですから、これはもう一大事といえましょう。
しかしあいにくなことに、この難事件に直面した図書館司書志望の青年イスラエル・アームストロング(おかしな名前ですが本名です)は、主役なのですがどうにも頼りない。
憧れの司書になるため、縁もゆかりもない北アイルランドの片田舎にやってきたはいいものの、勤め先になるはずの図書館が閉鎖していたところからケチがつきはじめ、次から次へとひどい目に遭いつづけます。移動図書館とは名ばかりのおんぼろ自動車を与えられ、「職務だから」という理由で本探しをさせられるその苦闘ぶり、本人には申し訳ありませんが、これがたいへん笑えるのです。はたして、イスラエルは無事に図書館の本を取り戻せるのか……?
本への愛情がたっぷり、笑いの要素もどっさり詰まった本書『移動図書館貸出記録1 蔵書まるごと消失事件』は2月24日刊行予定、おすすめです。
ところで、〈移動図書館貸出記録〉というシリーズ名のあとに「1」とナンバーがふってあることからもおわかりのとおり、このシリーズは引きつづき第2作が刊行されます。その第2弾『移動図書館貸出記録2 アマチュア手品師失踪事件(仮)』は、夏頃みなさまにお届けできる予定ですので、どうぞお楽しみに。
憧れの図書館司書となるべく、北アイルランドの片田舎タムドラムにやってきた気弱な青年イスラエルを待っていたのは、図書館の閉鎖という無情な現実だった。代わりの職務として、移動図書館の司書を任されたものの、肝腎の蔵書一万五千冊は一冊残らず消えていた。だれが、なぜ、どこに? 事件を解決するはめになったイスラエルの、孤軍奮闘が始まる。頻出する実在の本の話題も楽しい新シリーズ、発車!
【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】
本格ミステリの専門出版社|東京創元社